できない上司に使われることほどの苦痛はない
三宅:社長としてのいろんな思いもあると思うのですが、事業と社員の方の成長については、どういうふうに考えていますか。何か具体的に行動したことがありますか。
田中:社員の成長が会社の成長です。ですから社員が成長しないかぎり、会社の成長もないと思います。教育機会の提供は推進していますが、かといって、何か特別にすごい教育をしているのかというと、一概にそうでもありません。そもそもの話になりますが、変な上司さえいなかったら、社員はおのずと成長できるのではないかと思います(笑)。いろいろな企業を見ていて気づいたのは、社員にとってできない上司に使われることほど苦痛なことはない。だから、たぶんその点のケアと対策がいちばん大切なのだと思います。
三宅:私は田中社長がいろんな機能性眼鏡を生み出して、眼鏡の概念を変えてくださったことに、すごく感謝しています。私自身昔、眼鏡をかけていましたが、眼鏡を作りに行くことが憂鬱で、できるだけ買わないようにしていました。でも、JINSの眼鏡は眼鏡を視力矯正器具から、おしゃれの小道具に変えてしまった。何しろ安いしデザインがいいから、ひとりで何個も持って、その日の気分で好きなデザインを選ぶとか、洋服に合わせてコーディネートするなどということが可能になった。眼鏡屋さんは視力が悪いから仕方なく行くところ、という雰囲気じゃなくなりました。
田中:そうですね。オープンな店作りには力を入れています。
三宅:そういうところも変えようとされていたのですか。
田中:JINS以前の眼鏡市場には「不満の四重奏」が存在していました。それは何かというと、まずひとつ目は品ぞろえの少なさ。当時はライセンスブランド品しかなく、若年層向けのデザインなんて、そうなかった。2つ目はさきほども話題に上った価格。高いだけでなく、料金体系も不明瞭だったのです。それから3つ目が納期。検眼してから出来上がりまで、だいたい1週間は待たされる。あと4つ目はお店が格好よくない。店頭にのぼり旗が立っているようなお店しかなく、入りづらい。この4つを解消しようとしたのです。
三宅:商品だけでなく、やっぱり売り場が気になっていたわけですね。
田中:そのとおりです。実は自分は視力がいいので、眼鏡を買ったことがなかったのです。あまりにも自分とは縁の遠い世界だったので、自分もふらっと行きたくなるような眼鏡屋がいいなと考えたんですね。
三宅:前回の「安くてデザインのいい眼鏡を作り、いい店舗を作ったら、いろんな会社がまねしてきてそれに対して、見切ったうえで、投資して勝ち抜いた」というお話の中で、「JINS PC」のヒットのときも同じような話があったとお伺いしました。「JINS PC」のヒット時にやはり雨後のたけのこのように出てきた後発商品に対しては、どういう対策を打ちましたか。
田中:パソコン用眼鏡の類似品は効果を実証するエビデンスがなかったり、当社が調べたところレンズやフレームの質が低く、逆にかけていると目が疲れたりするようなものもたくさんありました。だからわれわれは堅実に品質を向上させながら、地道な啓蒙マーケティング活動を続けていけば、最後は残るだろうなと思っています。やはり本物が残るのだと思います。まねしたところは、残らない。だから、先へ先へと行けばいいわけです。
三宅:次にもまた何か、いろんなものを考えてらっしゃいますか。
田中:もちろんです。
三宅:楽しみですね。それも前回のお話にあった「根っこ」から出てきたものですか。
田中:そうです。
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