日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ

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次に、マクロからミクロへと目を転じましょう。コロナ以前からヘルスケア産業にはさまざまな変化が生じていました。キーワードとしては、個別化医療、デジタル化、サービス化、未病・予防、異業種からの参入、などが挙げられます。

個別化医療とは、遺伝子情報や生活習慣、バイタルデータ等のデータを利活用することで患者個人に最適化された医療サービスを提供するものです。オンライン診療やAI創薬を始め、デジタル化はあらゆる領域に及んでいます。従来どおりの医療ではなく、より広範な「医療サービス」を異業種からの参入組が提供する事例も目立ちます。未病・予防とは、「病気を治す」より「病気を防ぐ」「健康を維持する」ことに重きを置く医療のこと。医療費削減はもちろん国民の健康増進のためにも重要な取り組みです。

なかでも見逃せないのは異業種からの参入です。医療単独で見るなら「下りのエスカレーター」にある産業かもしれませんが、美容産業や健康産業までを含んだ広義のヘルスケア産業として見るならまだまだ成長トレンドにある。そう期待する異業種のプレーヤーが増えているのです。特に目立つのはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるテクノロジー企業。アメリカではすでにGAFAの動きが活発であり、こぞってヘルスケアに参入しています。

そしてwithコロナの世界において、こうした変化はさらに加速しました。なかでもDXの加速は特筆すべきものがあります。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは2020年4月の決算発表において「この2カ月で2年分のデジタルトランスフォーメーションが起きた」と語りました。感染拡大防止策として非接触・非対面が推奨されたことで、リモート化、オンライン化、モビリティ化、分散化が一気に進んだのです。

仮にコロナが収束してもこれらの多くは「ニューノーマル」として維持されるはずです。そしてDX化の波にのるかたちで、テクノロジー企業も躍進を遂げました。

デジタルでのエコシステムの構築が戦いの主戦場

テクノロジー企業はあくまで異業種であり、既存のヘルスケア産業に巨大なインパクトを与えることなどできない。そう考える人もいるかもしれません。確かに1つひとつのサービスを見れば、既存のヘルスケア産業に一日の長があるとも言えます。ですが、彼らはそもそも、1つひとつのサービスのシェアを奪おうとはしていません。彼らがターゲットにしているのは、ヘルスケア産業の「エコシステム」そのものです。

ここで紹介したいのはノキアの事例です。かつて「携帯電話といえばノキア」「フィンランドの奇跡」「技術の神童」と称賛されていた同社ですが、アップルのiPhoneの登場により倒産危機に追い込まれました。そこからの劇的な復活劇も興味深いのですが、ここで強調したいのは「グローバルトップ企業が異業種からの参入組により倒産寸前まで追い込まれた」という事実です。

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