日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ
健康サービスデータ(サービスレイヤー)は、さらにその上に乗る医療機関サービス、行政サービス、健康・保健サービス、医薬品・医療機器などのデータが直接的に蓄積されるインフラの役割を果たします。医療機関サービスはその名の通り、病院やクリニックなどで提供されるサービスのこと。行政サービスは保健所を含む、医療や介護に関わる行政サービス全般を指します。健康・保健サービスは、フィットネスジムなど民間のヘルスケアサービス全般。医薬品・医療機器は、医薬品メーカーや医療機器メーカーが提供するサービスであり、それらが集積しているデータのことです。
これら各レイヤーがマイナンバー/PHR(IDレイヤー)の上に構築されると、誰がどのようなヘルスケアサービスを受けているのか把握できるようになるとともに、そこで蓄積されたさまざまなデータが、各サービスの改善、そしてユーザーにとっての利便性向上のために活用できるようになります。
こうしたエコシステムの構築にあたって、最も重要であり、しかし見落とされがちなのは「ユーザー起点」であることです。行政や医療機関の業務効率化にも貢献できるエコシステムであるのは事実ですが、なによりも個人の利便性を向上させるものであることを、忘れてはいけません。アマゾンは「地球上で最も顧客第一主義の会社」になることをミッションとしていますが、これについてジェフ・ベゾスCEOは「顧客をその人の宇宙の中心に置いてあげる」と表現しています。
便利さ、使いやすさを何よりも意識する
つまり個人にとっての便利さ、使いやすさを何よりも意識するということ。PCにしろスマホにしろ、すべてのITサービスにユーザーフレンドリーが厳しく問われる昨今です。私たちがすっかり慣れ親しんでいる「ワンクリックで買い物ができるECサイト」「サクサク動くスマホ」と同等のユーザビリティがなければ、どれだけ高機能でも、そのエコシステムは利用者を集められないのです。
と同時に、前稿でも指摘したシステム(利便性)×プライバシー(個人の尊厳)×セキュリティー(安全性)の三位一体のバランスには、最新の注意が払われなければなりません。システムに蓄積されるデータを利活用されるにしても、それは企業の利益追求より、「個人が自分の健康情報を把握できる」というユーザーの利便性が優先されるべきです。それらデータは個人情報にあたるため、扱いには万全のセキュリティーが求められます。さらに、他人の目にさらされてはいけないという意味で、プライバシー(個人の尊厳)が絶対的に守られなければなりません。良い例に韓国のマイマンバー制度があります。個人情報へのアクセスは、政府機関からのアクセスであってもすべてアクセスログがとられ、アクセス違反があれば違反度合いに応じて厳しく処罰されます。
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