日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ
ここからは私の意見を交えて展開しますが、私が提言したいのが、規制改革(行革)、コロナ対策(厚生労働)、デジタル庁(IT)を三位一体とするDXです。すなわちヘルスケアDXであり、ヘルスケアエコシステムの構築です。
ここでいう三位一体とは何でしょうか。医療政策においては、コロナ危機や同様の感染症リスク等への対応、医療費抑制、何よりも国民の保健・医療・生活の向上を推進していきます。規制改革は、オンライン診療、遠隔診療、AR/VR診療・医療、遠隔医療、医療分野でのアンビエントコンピューティング等実現のための規制緩和などを指します。デジタル政策においては、後述するシステム(利便性)×セキュリティー(安全性)×プライバシー(個人の尊厳)のバランスを図ることが肝要になります。
個人のIDが肝になる
この三位一体と実現するヘルスケアエコシステムとして私が提言するのが下の図です。
そもそもエコシステムは、複数の階層(レイヤー)が積み重なり、各階層にさまざまなプレーヤーが参画するところに特徴があります。私が提案するヘルスケアエコシステムは、底辺にマイナンバー/PHR(IDレイヤー)を置きます。これがすべての階層を支えるインフラです。PHRとはパーソナル・ヘルス・レコードの略称で、これまで複数の病院や薬局などに散らばっていた個人の健康関連の情報を一箇所に集約する仕組みをいいます。個人が自分のデータにアクセスし、健康管理や治療、予防・未病対策に活用することが狙いです。またPHRはマイナンバーと同じく個人のIDとしての役割を果たすものでもあります。
このIDを起点にすべてのサービスを構築していきます。例えば、医療ポイントによる決済・支払い・入金です(医療ポイントレイヤー)。決済・支払い・入金サービスもエコシステムのなかにビルトインされているのです「医療ポイント」としたのは、今回のドコモ口座など電子決済の不正取引問題を背景に、銀行口座と決済・支払い・入金用アプリを紐付けることに抵抗感を覚える人が一定数存在するためです。そこで決済・支払い・入金などは医療ポイントでまかなえる選択肢を用意し、銀行口座と決済・支払い・入金用アプリを紐付けるかどうかは個人の判断に任せることにします。
医療・健康データ(モバイルデバイスレイヤー)は、前述のアップルのエコシステムの事例でいうと、標準搭載のヘルスケアアプリに歩数などが集積するiPhone、心電図機能に血中酸素濃度センサーまで搭載するに至ったiPhoneなどがあたります。健康データを超えて医療データまでを集積するデバイスを、GAFAに委ねるのではなく、日本独自に、国と企業が一体になって推進していくのが望ましいと私は考えます。
その上に、電子カルテデータ(医療機関レイヤー)があります。現状、多くの医療機関に電子カルテが導入されていますが、問題はそのデータが医療機関ごとに分断されていること。そのバラバラの電子カルテデータを、このレイヤーで統一、連携できるようにします。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら