健康に生きるため「3つの時計」を意識せよ 『健やかに老いるための時間老年学』の著者に聞く

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──島皮質にあるこころの時計はどうなりますか。

脳の奥深くにあり、一見、特別に保護されているように思えるが、脳梗塞に影響されやすい構造にある。島皮質において予想ができるという能力も、認知機能などに関係する部位と連関しているだけに、そのネットワークの協調が老いとともに崩れていきやすく、いわゆる老年症候群を起こす。

──細胞数の減少が老化を促すのですか。

人体には分裂を繰り返す細胞と、分裂をしない細胞とがある。皮膚や赤血球は、数日から数週間単位で、できては消え、生まれては死んでいる。だが、それは人の死ではない。心筋や脳といった分裂しない細胞の数が減っていくのが老化であり、それが進むと個体としての死を迎える。

──老化防止には時計の狂いを遅らせるのが大事なのですね。

老化は時計の狂いが並行して促す。時を刻む体の仕組みを使って老化を穏やかにすることはできる。

体内時計はもともと約25時間のリズムで、地球の自転周期より1時間近く長い。つまり、きちんと睡眠を取り、朝、光を浴びて、体内時計の針を整えることが大事なのだ。光の中に含まれている青の成分が体内時計を調整するが、網膜にあるメラノプシンという神経細胞がそれを受けて働く。その神経細胞が初老の頃から減ってきて、体内時計が狂いやすくなる。それが人は目から衰えるという経験則に表れている。同時に、規則正しい朝食が腹時計の働きと兼ね合い、老化防止にいい作用をするはずだ。

『健やかに老いるための時間老年学』
ミシマ社 2000円+税 261ページ

おおつか・くにあき
時間医学老年総合内科(寄附臨床研究部門)を主宰。1948年愛媛県伊予三島市生まれ。九州大学医学部卒業。同大学温泉治療学研究所、高知医科大学老年病学教室を経て、98年東京女子医科大学東医療センター内科教授、2008年から同大学東医療センター病院長。13年4月から現職。

塚田 紀史 東洋経済 記者

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つかだ のりふみ / Norifumi Tsukada

電気機器、金属製品などの業界を担当

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