京急のレア車両、元祖「幸せの黄色電車」に潜入 トラックのような荷台を備えた「電動貨車」

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ところで、取材に立ち会ってくれた渡辺さんと、同じく広報部の遠藤勉さんは、かつて運転士や車掌としてデトに乗務したことがあるそうだ。通常の車両とは大きく違う構造だが、運転操作などに違いはあるのだろうか。

「外観だけ見ればまったく別物ですが、機器類は他の車両とあまり変わりませんので、運転操作などもそれほど大きな違いはありません。ただ、走っているときには駅のホームなどで、ものすごく注目されているのを感じました(笑)。運転士としても、めったに乗務することがない車両ですので、担当する際は若干ワクワクする部分がありましたね」(渡辺さん)

乗務員にとっても特別

「私は車掌として乗務していましたが、駅などを通過する際に後方を確認していると、他の列車よりも目で追う人は多かったです。『黄色い電車を見ると幸せになれる』という話が話題になってからは、とくに多くの視線を感じました。中には大きく手を振ってくれる子供たちがいて、業務に支障のない範囲で手を振り返すこともありました」(遠藤さん)

乗務員にとっても、デトは特別な存在のようだ。

新1000形の8両編成を特別塗装した「京急イエローハッピートレイン」(編集部撮影)

いつしか「幸せの黄色い電車」と呼ばれるようになったデト。だが、当然ながら乗ることはできず、その姿もなかなか見られない。そこで、京急は2014年から「KEIKYU YELLOW HAPPY TRAIN(京急イエローハッピートレイン)」として、営業用列車を黄色く塗って運行している。うれしいのは、京急のウェブサイトで列車の運行予定が発表されていること。走行区間もデトより広く、より多くの人を今日も幸せにしている。

一方のデトも、その人気は衰えていない。

例年5月に開催されている「京急ファミリー鉄道フェスタ」では、営業車両に交じってデトも展示されており、多くのファンがその姿をカメラに収めている。2020年はコロナ禍の影響で10月18日に“リモート開催”することとなったが、京急川崎駅1番線でデト11・12形の実物を展示する予定だ。全国的にも鉄道イベントの中止が相次ぐなか、多くの子供たちをデトが笑顔にしてくれるに違いない。

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伊原 薫 鉄道ライター

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いはら かおる / Kaoru Ihara

大阪府生まれ。京都大学交通政策研究ユニット・都市交通政策技術者。大阪在住の鉄道ライターとして、鉄道雑誌やWebなどで幅広く執筆するほか、講演やテレビ出演・監修なども行う。

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