京急のレア車両、元祖「幸せの黄色電車」に潜入 トラックのような荷台を備えた「電動貨車」

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乗務員室の後ろ側は、長さ4m弱の客室、もとい荷物室になっている。ここは、添乗する職員や、水に濡れてはいけない荷物を載せるスペースだ。こちらも、扉や窓、わずかに設けられた座席が、旧1000形の雰囲気を醸し出している。

デト11形の荷台。ここに車両部品を積んで輸送する(筆者撮影)

一方、車体の大半を占めるのが、トラックのような荷台部分だ。そしてこの荷台こそが、デト11形の存在理由でもある。

「デト11形の役目は、この荷台に修理などで必要な部品類を積み、ここ(新町検車区)と金沢検車区、久里浜工場を往復することです。当社では、列車検査は各検車区で、より大掛かりな検査である定期検査は久里浜工場で行うことになっています。故障が起こった場合に備えて、各検車区には予備部品を保管しているのですが、その予備部品や故障した部品のやり取りに使っているのです」(渡辺さん)

トラックのような荷台

デト11形の荷台は、大型の機器を積み込めるよう、十分な強度がある。また、側板はトラックのように倒すことができ、フォークリフトなどで荷物を直接積み込むことができる。かつてはこの荷台で、線路のバラスト(敷石)なども運んでいたそうだ。

新町検車区に保管されている機器類(棚の2段目)。デトはこれらを運ぶために運行される(筆者撮影)

鉄道会社が自社で使う車両部品などを運ぶ列車は「配給列車」と呼ばれる。かつては多くの鉄道会社が配給列車を用いていたものの、次第にトラック輸送に切り替えられ、現在も運行している会社はほとんどない。

なぜ京急は現在も配給列車を運行しているのか聞いてみたが、実は明確な理由はないそうだ。おそらく、以前からずっと列車で部品を輸送しており、自社の線路を使って運べば渋滞に巻き込まれることもないため、トラックに切り替える積極的な理由がないのだろう。

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