ゼンショーが抱く、あまりにも壮大な夢 ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(1)
そういう基本的な認識と言うのは、会社にとっても経営者にとっても、それから従業員にとっても一番大切ということが、基本的考えです。社内的には、ゼンショーグループ憲章という形にして、われわれの宣言、地球上から飢餓と貧困をなくするぞと、なくするぞと言っただけではできないから、原材料の調達から加工・物流、店舗での販売、ここまでを一貫したシステムとして、自分たちで設計する。
それから自分たちで物質化する、作り上げる、そして自分たちでオペレーションする、汗をかいて。ということを宣言してるわけですよ。具体的にはということで、いろいろ組織論から批判まで、展開しているわけですよね。
インフラとしての「食」
――ゼンショーがグローバル企業になって、世界展開すれば、世界から飢餓と貧困はなくなりますか。
なくなります。なぜならば、原材料の調達から加工、一言で言ったけども、調達の部分というのは、産業別で言えば、農業、牧畜、こういうところですよね。そして、水の問題もある。それからこれらを供給する社会インフラ、いろいろ問題の挙がっている水道だとか、道路だとか冷蔵設備だとか。
加工の部分はハム・ソーセージから始まって味の素まで。これを3部隊で物流する物流システム、われわれは日本中に作り上げているわけですけども、24カ所にディストリビューションセンターを造って、26カ所に工場作って、毎日4000店に物流してるわけですよね。これをモデルとして、世界でシステムを作る、運営していくということが基本的考えですよね。
これをやっていくと、今は飢餓で死ぬ人が年間1400万人いると言われているわけですけど、食料は1400万人分ないのかといったら、あるわけですよ。最近、食料大丈夫かとかいうけど、はっきり言えば、余っている。偏在している。物流・加工・保管とか、そういう仕組みが不備な地域で、飢餓が発生している。
もう一つが所得の問題。所得が低すぎて買えないということがありますね。社会インフラとして、鶏と卵なんですけども、増える仕組みができるということは、僕らのこのシステムだけでまず相当な雇用ができるわけですよ。
産業連関物的に言えば、そういうインフラが整備されつつ、いろいろな産業が成立可能になってくるわけですよ。なぜなら働く人が増えるようになるから、増えるシステムがインフラとして整備されているから、工場で働ける人が増えて、サービス産業に従事できる人が増える。
これは表と裏です。実際は並行的に進められる。こういう構想を基に、社会インフラとしての安全な食を世界中に供給できる。僕らはマスマーチャンダイジングシステムと呼んでいるけども、このシステムを世界中に作り上げるのが、われわれの基本的な仕事だということですね。
――理念としては一番大きな理念。失礼な言い方ですが、本当に小川さんはそれを信じて、その達成のためにという思いでいらっしゃるわけですか。
そうです。出発点から、出発の前からそうです。
――先ほどおっしゃった10歳や学生運動あたりから形成されたんですか。
どこまで遡るか。僕が大学に入ったのは1968年。いい時に入ったと思うんだけども、時あたかも、東洋の一角、ベトナムでは、毎日空爆が行われ、ベトナムに対し、最大の国である米国が50万の陸上部隊をつぎ込んで、戦争やっていたということが一つ。
それから、隣の中国大陸では毛沢東が失脚して、揚子江で泳いでそこから文化大革命が起こり、つまり奪権闘争をスタートさせたのは1966年ですか。文化大革命が燎原の火のごとく広がって。日本でも、さっき言ったように1945年に戦争が終わって、本当にみんなで汗だくで働いて、GDP2位になったのが、この頃じゃないですか。
そういう中で、いろんな社会矛盾、高度成長のひずみが起きた。公害は垂れ流し、水俣病でいっぱい死んだり、半身不随になってもチッソは俺のとこは知らないと。今から思うと笑っちゃうくらいとぼけていた。ベトナムではがんがんベトナムの人たちは死んでいるし。
ドイツでは社会主義学生運動の連中がものすごい運動をやって、激動ですよ。フランスではカルチェラタン、火炎瓶投げて。後に僕は見に行きましたけどね、フランス行って。カルチェラタン、どうなってるんだろうと、創業してから(笑)。