ゼンショーが抱く、あまりにも壮大な夢 ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(1)
という状況の中で、松田社長が何月か忘れたけど退かれてという風になってきて、いろいろな中で更生法となったんですよ。そういう中で、新橋商事は当 時25店舗の優良な店舗をやっていて、直属上司の経営企画室のイデ常務が、独自再建というのは不可能となったから、新橋商事の25店を中心として、フラン チャイズのオーナーを集めて、こちらで再建やると。大株主としてはそういうディシジョンだと。
ついてはお前も来てくれと、流れとしては仕方ないと。僕としてはそういう、新橋商事の外食部門である、株式会社ニッショーというとこですけどね、そこに財務室長で行って、そちらを軸にした再建をやるという流れになった。
――松田さんと安部さんたちと袂を分かって、ということに結果的になったんですか。
袂を分かってというわけではなくて。そんな意識は全然なかった。流れの中で。安部さんもそうなんだけど、当時彼は有楽町店の店長をやっていて、株主 のことなんかわかんないですよね。そもそも3分の2の株を持つということはどういうことなのかと、言っちゃ悪いけどアルバイト出身ですから、定時制高校出て。
そういう人たちがオペレーションラインでほとんどでしたから、今でもそうですけど、そういうことってわかんないんですよね。僕は冗談半分で、吉野家 さんが本を出されて、ソ連邦の歴史って呼んでいる。もうちょっと包括的なことがある。そういうものかなと思っていますけど。外から見たときに、ソ連邦の歴 史が100%ソ連邦の歴史ではない。たぶん50%とか40%でしょう(笑)。
吉野家で学んだことはない
――結局、吉野家で学ばれたこととは、どういうことですか。
うん、社内にも言うんだけど、勉強になったとか、おかしいわけですよ。とりわけ何が勉強になったということはないですね。ただ、僕は僕なりにいつ も、労働運動やってきたときもそうだし、全力でやってきた。これはプライドを持っている。そういう中で、できることを120%やろうと思ってやってきた。
ただ、一つだけいえるのは、当時31〜32歳、もう10歳、年が欲しいなと、当時思いましたね。40代だったら。話しているのが、当時都市銀行の支 店長は50過ぎなわけですよ。やっぱり、僕はキャリアとか年齢は経営をやるうえで、ものすごい大事だと思うんですけど、やっぱりそこのところはありますよ ね。人間として、向こうから見れば若造ですから、正論を言ったって、同じこと言ったって、40代と30そこそこでは信頼感が違うだろうなと。
それからもう一人、俺が欲しいなと(笑)。一人で頑張ったけども、安部店長とか、コジマとか、戦える本当の意味での企業を守っていく人材がたくさん いればいいんだけど、少なくとももう一人いれば全然違うと、当時の実感。他人が聞くと、あいつはアレだと思うかもしれないけど。感覚としてそう思いました よね。徹夜徹夜で再建計画を作り、銀行と交渉し、株主に対して説得し、株主の何たるかもわからないような社内の文化でやっていたわけですから。
――しかし、新橋商事に行かれて、数年経って。
2年ですね、1980~82年。企画室長で、25店中心にやったわけですけども。虎穴に入らずんば何とかって言いますけども、虎穴に入って初めて本 当の意味の企業の体質とか、経営とかわかるんですよね。吉野家再建のときから感じていた、ディシジョンのスピードですよね。いい悪いじゃなくて業態が違う から、外食産業にとっては、遅いと。
実際にやってみると、具体的に日々そういう問題と直面せざるをえなくなったわけですよ。だから実質僕が率いて、前向きにやろうとしているのに、一向 に経営はディシジョンしてくれないわけですよね。2年間やったけど、このままでは飢餓と貧困をなくすどころか、100店舗のチェーンもできやしない、と。 ということで部下と、どうせやるなら、もっと可能性のあるやり方をしようということで、創業したわけですよ。
――25店から何店まで増やされたんですか。
増やせないんです。だって、ディシジョンしてくれないんです。それは辛いもんです。よく創業した頃、取引先とかから「社長、脱サラですか」なんて言われたんだけど、脱サラって言う感覚はまったくないし、違うだろうという違和感はすごくありましたよね、創業当時ね。
世間から見ると俺って、脱サラなのかなと。大体“脱〟というのはヘンじゃないですか。サラリーマンから逃げる、脱出するみたいな。もともとサラリーマンの意識で働いていませんからね。
(撮影:今 祥雄)
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