ゼンショーが抱く、あまりにも壮大な夢 ゼンショー・小川社長が語る経営哲学(1)

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起業家にとって重要なこと

――小川さんがおっしゃる、安全・品質・コストについては、外食産業としてこれはよくわかりやすい。しかし、もっと大きなテーマとして、世界中から貧困をなくす、と。これは、すばらしい理念なんですけどね、つまりゼンショーが成長することと、世界中から貧困をなくすというのは、小川さんの中ではどうつながっているんでしょうか。

そうですね、大変なテーマだろうと。大変なテーマだからこそ、チャレンジ意欲がわくし、やる必要がある。できなければ、俺の責任だと。要するに、この地球上に飢餓と貧困があるというのは、俺のせいだと思ってるんですね。自分のことなわけですよ。そもそも創業したというのは、そういう世界認識・歴史認識があって創業したわけですから、よくアントレプレナーとか起業といいますけども、ここが一番大切だと思うんですね。

もっと言っちゃうと、僕は社内でもたまに言うんですけども、みんな人間として生まれてきて、才能を持っている。だけど、才能を100~120%発揮している人にはほとんど会わない。みんな八掛けくらいで大抵頑張ってますという。それ以下の人も多いのが現状ですよ。自分の才能というのは、たとえば親にもらった才能だというんだけど、そんなのは馬鹿じゃないのと。親の親は何、ということでしょ。

調べてみると、最近この分野というのは、だいぶ発達しているんだけども、ミトコンドリアのDNAをずっとトレースしていくと、13万年くらい前に、1人のミトコンドリア・イブと呼ばれる西アフリカの女性にぶち当たると。何のことはない、直立歩行を始めて400万年といわれているけど、人類は。400万年直立歩行を始めてきて、つい最近の13万年前に、今いる68億人は、みんな同じお母さんだったということが、物質生物学的にわかりつつあるわけですよね。

そこからいろいろバリエーションが出てきたと。みんな同じ意味において、1人の同じ母親の遺伝子を受け継いで、肌の色が黒くなったり白くなったりしたけど、そんなの大した違いじゃない。だけど100メートル走れば10秒切るようなやつとか、数学とってもすごいとか、いろんなバリエーションができてきたということが13万年間でしょ。

才能持ってるんだよ、間違いなく。持ってないというんだったら、みんな持ってない、間違いなく。だって同じ母親なんだから。だけど、やはり100%発揮している人は実際非常に少ない。要するに自覚が足らないわけね。自分の才能に対する。じゃあ自分探しだとかすぐ言うんだけど、経験的に言えば、内向していけば内向していくほど、自分の才能なんかわかんない。わかるわけねえだろうと。

人類とは社会的な存在であり、昔は類的本質って言っていたけど、あれは本質においては正しかった。人類に対して、われわれは一部を担っている。人類全体の中で、仕事として。われわれの生活というのは人類全体的に成り立っている。特に20世紀後半から21世紀初頭、世界中でモノと人の流れが速くなって、モノについても、もう世界中の食品や世界中から来た衣料品を着ているわけでしょ。

人類全体で、1人の生活も成り立っている。構造にあるわけですね、構造に。その中で供給だけ世界から受けていて、アウトプットは自分発見のためにといったら、馬鹿でナンセンスで、論理矛盾なんですね。人類全体に対して、自分が供給側に回らなければいけない。こういうのが基本構造だと認識しているんですよね。

人類から飢餓と貧困をと言うと、そんなことできるわけがない。大げさだと思う人が多いと思うんだけど、そうではなくて僕自身のアウトプット、株式会社ゼンショーのアウトプットとして当然のこと。そういう中で、機能会社・機能組織と言っているんですけど、ゲゼルシャフトですよ。機能というもの、社会に対してどういう機能を果たすのかというのが、株式会社としてのレーゾンデートルであって、それがないんであれば商売なんか成り立つわけないし、意味がない、すぐ消えるでしょう。どうでもいい商品を提供したり、どうでもいいサービスを提供しても、社会的な意義なんか果たしてないんだからなくなる。

株式会社ゼンショーは、ゲマインシャフト・共同体ではなくて、共同体というのは内の論理なんですよ。わが村、わが社、わが部の利益ではなくて、最近批判されている省益とかね…わが省もへったくれも、国家のマネジメントをやっている一部でしょ。という認識なんですよ。

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