ANAとJAL「希望退職」実施をめぐる決定的な差 両社の対応がわかれた「2つの要因」とは?
もう1つがコードシェアと自社便をめぐる戦略の違いだ。コードシェアとは、提携相手の運航便を自社便として扱い、座席を販売し合う仕組み。ここ数年、JALは自社便の代わりにコードシェアの提携先を急拡大してきた。
例えば、ある海外エアラインが羽田に就航する際、JALとコードシェアすればその販売網を活用し、より多くの日本人に座席を販売できる。逆にJAL側は、自前で就航するのに必要な機材投資や固定費を抑えつつ、事実上の新規就航や増便ができる。直近2年間だけでもJALは海外エアライン12社とコードシェアを始めた。
一方、同期間にANAがコードシェアを開始した提携先は2社にとどまる。ANAは自社便の運航規模拡大に力を注いできたこともあり、直近2年間で機材など固定資産の増加額が年間3500億円超と、JALの同2000億円台前半を上回る。
ANAのように自社の販売網だけで満席にできる都市を探し出し、自社便を飛ばして収益の丸取りを図るのが市場の拡大局面における王道だ。6年前はJALの営業利益がANAよりも約1000億円大きかったが、自社便の強化で2019年3月期には約100億円差まで縮まるなど、ANAがJALを猛追してきた。
だが、自社便戦略は需要が急減すると固定費が重くのしかかる。期末に新型コロナが直撃した2020年3月期の営業利益はJALが1006億円、ANAが608億円と、再び約400億円の差が開いた。JALは「いたずらにシェアを拡大する経営は行わず、リスク耐性を保てる健全な範囲での成長を意識してきた」(菊山専務)と強調する。
カギを握るANAの事業構造改革
ANAの今後を占うのが、10月末の決算と同時に発表される事業構造改革だ。全日本空輸で常勤顧問を務める藤村修一氏(運輸総合研究所の客員研究員)は8月、同研究所が主催するイベントにおいて「ほとんどの海外同業は(新型コロナの影響が)4~5年続くとみて、事業規模を小さくして再出発したいと考えている。日本の航空会社も基本的なコンセプトは同じだ」と含みを持たせており、ANAが国際線をどこまで縮小するかが焦点になる。
それに伴い、中期的な余剰人員の発生は避けられない。すでにJALは、業務量の減っている約1000人の客室乗務員を地方の観光振興と兼業させる「ふるさと応援隊」の結成を発表し、人員配置における取り組みを見せている。ANAも雇用の維持に向けて、大胆な従業員の適正配置が急務だ。
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