手芸に夢中になるシニア男性が増えているワケ ハンドメイド作品販売アプリもブームを後押し
東北地方で寒さを防ぐ布の補強から生まれた伝統刺しゅう「刺し子」は、海外でも「SASHIKO」として注目されているし、布ペンやアップリケ、刺しゅうでスタイリングできる「100ネエサン」や、ワイヤを用いた3Dの立体刺しゅうなども生まれている。
人気刺しゅう作家の1人、樋口愉美子さんのインスタグラムのフォロワーは34万人。作品の写真がアップされると、英語やロシア語やトルコ語など世界中からのコメントで埋まる。世界で注目を集める理由を、樋口さんはこう話す。
「一針一針ていねいに刺すわたしの作品に、皆さんが興味をもってくださるのはうれしいです。地道な作業ではありますが、いまのスローライフの世の中の流れに合っていたのだと思います」
今やお金のかかるぜいたくな趣味となった手芸
前出の日本ホビー協会の荒木専務理事は、手芸の位置づけが変わったと話す。
「昔の手芸の位置づけは、母親が支出を抑えるために手づくりで洋服やバッグをつくっていた。だが安価なファストファッションが出現した。材料の布は安くないので家庭で手づくりするほうがコスト高。今や手芸は、お金のかかるぜいたくな趣味なのです」
フランスの老舗刺しゅう糸メーカーのDMC(ディー・エム・シー)グループの高級手芸道具も売れている。眼鏡フレームの産地として有名な福井県鯖江市の職人と協力し、フレーム素材を刺しゅうの枠に仕立てた「鯖江刺繍枠」や、細かい手芸作業に用いる「鯖江リング・ルーペ」は、1つ4000~6000円だ。
「経済的に余裕のあるシニア層や、コロナ禍以前はインバウンドで増えた外国人客によく売れました」(小山田光晴代表)