古くさい野球界が、やっと変わり始めた 侍ジャパンが打ち破る、プロ・アマの壁
少年にもプロの技術指導を
侍ジャパンとは、野球界におけるロードマップでもある。少年たちが将来のスーパースターを目指すうえで、欠かせないのが理にかなった指導だ。2013年までそびえ立っていたプロアマの壁は、この点で大きな障害となっていた。
かつて巨人の守護神やヘッドコーチとして活躍した鹿取義隆は現在、侍ジャパンのテクニカルディレクターを務めると同時に、15U代表を率いている。少年たちを教える際、最も重視しているのは技術指導だ。それは、熟練の技を持ったプロだからこそできることでもある。
何より技術が大切な理由について、鹿取が説明する。
「セレクションを通過したレベルの子が侍ジャパンに来るので、だいたい正しい投げ方をしています。それをもっと正しい投げ方にしてあげることで、安定してストライクが入るようになる。それで結果が出る。自信がついてくる。そういう流れに変えてあげることで、メンタルも強くなる。つまり身体の使い方が悪いと、メンタルが強くならない。もちろん約束事を守るとか、教育的な要素も必要。そうやっていくと、子どもたちは伸びるスピードが速くなる」
アマチュアの指導者には、技術を正しく伝達できていない者もいる。とりわけボランティアに支えられている少年野球の世界では、間違った論理が“常識”となっているケースも少なくない。
たとえば筆者は少年野球チームや中学の部活動で、打撃の際に「脇をしめろ」とよく言われた。理屈のわからないまま自己流で脇をしめてスイングしたが、あまりヒットを打てなかった。正しくは「スイングを始動させてからインパクトするまで、脇をしめるべき」なのだが、その説明が省略されると、かえって不合理なフォームで打つことになる(詳しい理論はリンクを参照)。鹿取が巨人OBとして少年野球教室に行った際、ボールの握り方を知らない指導者も珍しくないという。
最悪なのが、間違ったフォームで野球をしているがゆえに、ある箇所に過度な負担がかかってケガをし、競技人生を棒に振るケースだ。そうさせないため、日本のプロ野球やメジャーリーグでは新人に対し、まずは正しいメカニック(フォームにおける一連の動作)を教える。球団にとって、選手は何より大事な資産だ。投手は正しいフォームで投げれば、疲労度を軽減できるため、より多くの球数を放ることができる。
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