たとえばバス事業を考えたとき、バスを走らせるためにはバスそのもののほか乗務員と燃料が必要です。このうちバスに関する費用と乗務員の人件費は、走ろうが走るまいがつねにかかるので固定費、燃料費は走らないとかからないので変動費になります。
ここでバスに関する費用と乗務員の人件費を足した費用(≒固定費)が、たとえばお客さん5人分の運賃に見合うのなら、そのバス路線の乗客が5人未満なら絶対に赤字になります。
一方でそのバスがある路線を走ったときにかかる費用の総額、つまり先ほどの固定費に燃料費を足し込んだ費用が、たとえばお客さん8人分の運賃に見合うのなら、そのバスに8人以上乗ればそこからの増分はひたすら儲かり続けます。そこで積み上がった売り上げがそのまま利益になります(費用を抜かなくていいわけです)。
(ちなみに上記は超簡易的な例です。実務的には、たとえばバスそのものの費用はすでに焼却されているのではないか?とか、バスはダイヤどおり運行しなくてはいけないので、実は燃料もひっくるめて固定費ではないか?とか、売り上げ費用を見るのはどの単位か?とか、区間運賃はどう考えるのか?とか考えねばいけないことは膨大です。とはいえここで詳細に突き詰めていくと、この稿のそもそもの本質を見失うので、かなり枝葉は省略しています)
とにもかくにも、こういう(損益分岐的な)イメージを費用から逆算しておくことはとても重要です。
製造業と旅行代理業、費用構造の違い
結局、行き着くところはビジネスの型です。ほかの例でいえば、旅行代理店ビジネスは旅行の申し込みがなければ旅行商品の仕入も発生しないので、売り上げが低くてもある程度ビジネスは回ります。人材派遣ビジネスもそうです。派遣の仕事がなければ、そこでの派遣スタッフに支払う給与も発生しません。
でもバスはそうはいきません。飛行機もそうはいきません。多くの製造業もそうはいきません。
一方で、旅行代理店も人材派遣も売り上げがどこまで大きくなっても、つねに旅行商品の仕入や派遣スタッフの確保が同じように必要となります。つまりどこまでいっても費用はかかり続けます。
他方、バスや飛行機は少なくとも持っている収容能力までは、顧客が増えても費用は(それほど)変わりません。バスや飛行機の席が空席でも、あるいは埋まっていても追加で費用がかかるわけではありません。
こういったビジネスの違いにおける費用の構造は事業計画策定にあたって、極めて明瞭に「手触り感」をもって理解しておく必要があります。こうやって書いてみると当たり前すぎる話ですが、当たり前すぎるからなのか、多くの場合、十分に把握されていないように思います。
ここまで書いたらそろそろ紙幅が尽きてきました。書きたいことがありすぎるテーマです。次回もまた事業計画に入魂するアプローチについて、さらに考えていきたいと思います。
※ 本文は筆者の個人的見解であり、所属する組織・団体を代表するものではありません。
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