「手触り感」を持った事業計画とは? 魂の事業計画を作るために(前編)

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より具体的に書きます。たとえば計画には必ず施策が入りますが、その施策が売り上げを上げるためのものか、費用を下げるためのものかによってその進め方(アクションプランと言ったりします)はまったく異なります。

売り上げを上げるための施策は、企業がどんな優れた商品を開発したりサービスを提供したりしても、それを買うと決めるのは顧客である相手であり、それはコントロールできるものではありません。したがって相手のイシューです。

そのため、取るべきアクションプランは、理屈をこね繰り回すより、とにかく球を打ちまくって顧客の反応を確かめながら、高速で改善サイクルを回しながら精度を上げていくトライアンドエラーのスピード感がキーになります。

一方で、費用を下げるための施策は、基本的に使い方を変えるか払い方・払う相手を変えるかしかありません。要するに節約できますか、値引きできますか、もっと安く売ってくれるところと付き合いますかということです。これは逆に自分が意思決定できる、自分のイシューです。

ここでのアクションプランは上とは逆で、費用構造の論点整理をきちんとし、意思決定した内容を緻密に進捗管理しながら進めていく、論理的思考とブレない意志がキーになります。

この両者をきちんと分けないまま、単純に施策とアクションプランを考え始めると、必ず間違えます。それが事業計画に魂を入れるための第1のポイントです。

損益の分岐を「手触り感」をもって押さえる

次のポイントは、こういった「施策の議論」と、今後、売り上げ・費用が自然体でどう変わっていくかという「成行の議論」を明確に区分することです。

成行とは、いっさい施策を打たない自然体の状況で、この事業はどうなるのかを虚心坦懐に予測することです。その自然状態をきっちりと見極めたうえで、施策を足し込んでいくこと。ここがごっちゃになると、結局、物事を判断するときに企業のポテンシャルや外部環境の影響と、自社独自の施策の影響があいまいになり、進捗がよくわからなくなります。

では成行での計画はどう立てるのか。その中身は売り上げと費用の2つに分けられます。そのうちまず費用ですが、こちらは比較的定型化可能です。

(分けてばかりでややこしくなってきますが、)具体的には費用の各項目を、売り上げ変化によらず固定的で変わらないもの、売り上げに合わせて変わるものに分類します。ここで分類した固定的な項目は横ばい、変動的な項目は売り上げに合わせて増減できるようにします(要するに、費用を固定費と変動費に分けるというごくごく当たり前のことです)。

ここまでは当たり前の話ですが、ここで見ておきたい絶対重要な点は、どの水準まで売り上げが達したら、以降はずっと儲かり続けるのか、そしてどの水準まで売り上げが落ち込んだら、以降は赤字から浮上できないのかを、明確に数字で「手触り感」をもって押さえておくことです。

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