堀紘一氏、クリステンセン教授と経営を語る 経営とは理論的なのか

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 ハーバード・ビジネス・スクールのクリステンセン教授とドリームインキュベータ会長の堀紘一氏は、2人ともボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の出身だ。BCGの後、異なる道に進んだ2人が、それぞれの経験と識見に基づき、経営についてボストンで語り合った。
ボストンで語り合ったクリステンセン教授と堀鉱一氏。

「政策×戦略×技術」という構想

クリステンセン:堀さんは、BCGを2000年に離れましたね。その後、今のドリームインキュベータ(DI)を立ち上げたと聞いてますが、そのあたりから話を聞かせてください。

:何か違うことをすべきだと思ったあの当時、別に自分の会社を作ろうと思っていたわけではありません。従来のコンサルティングとはちょっと違うことをしようかと考えたのです。それには2つの面がありました。

まず、中小企業を対象とするコンサルティングです。というのも、かつて大手コンサルティングファームは、多くの日本の中小企業経営者から、大企業の手伝いばかりしている、中小企業を助けてくれない、と批判されていました。

私の仕事は慈善事業ではありません。たとえ予算は少なくても収支が合うべきです。そこで思いつきました。新規事業なら、まとまった量の株式かストックオプションを得られるのではないか。成功すれば収益がある。だから新しいビジネスを助けることは可能だと。

クリステンセン:なるほど。

:もうひとつの発想には、あなたの影響があったように思えます。

少なくとも日本ではテクノロジーとストラテジーのつながりが極めて弱かった。だから技術力と戦略を結び付けるために努力したのです。まだBCGにいた頃にも、科学の知識や経験を持つ人材を採用しようと思いましたが、あまりうまく行きませんでした。それで新会社のドリームインキュベータ(DI)では、まったく異なるコンセプトを打ち出しました。

「政策×戦略×技術」という構想です。政策というのは公共政策のことで、昔からあるBCGやマッキンゼーのようなコンサルティング会社は、これについて割と弱かった。

クリステンセン:そのとおりですね。

:公共政策、企業の戦略、企業の技術力。これらの要素を混在させるという、まったく新しい分野を私たちは目指したのです。それでコンサルタントというより「ビジネスプロデューサー」と名乗るようになりました。

クリステンセン:それは面白い。

:本当に事業をプロデュースする立場にあると考えたところが、トヨタのような会社に気に入ってもらえました。長期的に利益をもたらす事業を生み出すためのコンサルティングです。5年とか10年先のことを考えます。短期的には儲かりません。

クリステンセン:いいですね。私も同じようなことをしていますから、興味深いことです。

:そうなんですか?

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