太田光「オワコンと呼ばれるテレビの真の凄み」 なぜ俺はテレビの仕事にこだわりがあるのか

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ところが、それからしばらくしたら、バラエティ番組でも活躍している毒蝮三太夫さんが『やすらぎの郷』に入所できたから「あ、まむしさん、入れてもらえたんだ!」とすごく驚いちゃって、「いいなぁ」と真剣にうらやましかった。まぁ、そんな驚きやうらやましさは、もはや現実とドラマの区別がつかなくなっているってことなんだけど(笑)。

現実社会では、テレビを「オワコン」(終わったコンテンツ)と呼ぶ人もいる。そんなことを言われたら、さっき口にしたような自覚があるとはいえ、まぁ、ムッとはするじゃない? それはどんなジャンルの人だってそうで、テレビでオワコンだと言ったひとりの茂木健一郎さんだって「脳科学業界はオワコンだ」って言われたら怒るはずでしょ?

ただ、オワコンではなく「全盛期」という言葉を選ぶのなら、倉本さんが『やすらぎの郷』で描いているようなことは、たしかにあるのだろうなぁとは思う。

テレビの熱気がすごかった時代

いつの頃からか、テレビがつまらなくなったと言われている。俺の感覚としては、自分がテレビに出るようになった30年前ぐらいからその言葉を耳にするようになった気がしていて、なんだか自分に対して言われているようで、「あーあ。なんだかなぁ」とひとりごちてしまう。

自分自身がテレビを夢中になって見ていた頃を振り返れば、『8時だョ!全員集合』や視聴率100%男・欽ちゃん(萩本欽一)の番組があった。バラエティ以外でも、それこそ倉本さんや向田(邦子)さんのドラマも毎週楽しみだった。

そのあとの漫才ブームの熱気もすごかったし、「テレビってなんかすげぇな」というあの熱をテレビに出る立場になってから自分がやれているかって言われたら、全然やれていない実感がある。そういうことを感じる度に落ち込むんだけど、いまの俺にはふたつの思いがあったりする。

ひとつは、昔と違ってこれだけいろいろな娯楽がある時代なんだから、テレビのあり方だって違ってきてもしょうがなくない? という開き直りだ。

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