太田光「オワコンと呼ばれるテレビの真の凄み」 なぜ俺はテレビの仕事にこだわりがあるのか

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さてどうしようかなぁと思ったら、便利だね、YouTubeって(笑)。志ん生やらほかの落語家やらの『名人長二』がかなりの数、アップされてたわけ。で、聴いたらこれがまたいい噺で、芸人でさえも忘れてしまっていた、言ってみりゃあ埋もれていた噺を現代に蘇らせるなんて豊原さんという役者もすげぇなと。しかも、そんな豊原さんも同じ年だったから余計に共感した。

自分たちにしかできない笑い

そして、もちろん我らがキョンキョンのプロデュース能力のすごさ。その舞台のプロデュースを彼女がしたんだけど、『オールナイトニッポン』のなかで、若手の役者の話になったのね。すると彼女は、「世の中では、ゆとりだなんだって言われているけど俳優の世界にはまったくない」と。「むしろ、いまの若い世代は頼もしい。私たちの世代のほうが、ぼんやりしていると思う」と言ったわけね。

その言葉のトーンが、お世辞を言っているわけじゃなくてキョンキョンが本当にそう感じていることが伝わるものだったから、俺はものすごく共感できた。芸人の世界もそうで、いまの若手は俺らの頃よりも全然うまいし、それはもう見事だから。

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そして、キョンキョンが「ぼんやりしている世代」として自分たちのことを語った言葉もまた、俺をうれしくさせてくれた。

キョンキョンは言う。
「自分たちの世代は新人類とか言われて、大人たちにはダメだダメだと言われてきたけど、でも、そういう世代にしかできなかったこともあったと思う」

その通りですよ、キョン様と(笑)。たしかに、クレイジーキャッツもドリフも漫才ブームもひょうきん族も全部が眩しい。憧れは絶対的にある。でも、我々の世代にも自分たちにしかできない笑いがあるんじゃないか? 「なんだかなぁ」とひとりごちがちな俺は、キョンキョンの言葉にちょっと救われた。ただね、そんなキョンキョンは、俺分析によれば、『やすらぎの郷』からの招待状が絶対に届くはずだ。

尊敬するし、励まされもしたけど、『やすらぎの郷』に入れるということだけはうらやましすぎるので、キョンキョンの口利きで裏口から入れてもらえないかなぁなどと考えている次第です(笑)。

太田 光 お笑い芸人

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おおた ひかり / Ota Hikari

1965年5月13日埼玉県生まれ。1988年、同じ日本大学芸術学部演劇科だった田中裕二と漫才コンビ爆笑問題を結成。1993年『NHK新人演芸大賞』で、漫才では初めて大賞を受賞。同年、テレビ朝日の『GAHAHAキング爆笑王決定戦』にて10週勝ち抜き初代チャンピオンに。以降、爆笑問題のボケ担当としてテレビ・ラジオで活躍。文筆活動も活発に行っている。主な著書に『爆笑問題の日本言論』(宝島)『カラス』(小学館)『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書)『マボロシの鳥』(新潮社)、『憲法九条の「損」と「得」』(扶桑社)など

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