太田光「オワコンと呼ばれるテレビの真の凄み」 なぜ俺はテレビの仕事にこだわりがあるのか

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テレビの熱気を作ってきたうちのひとりである久米宏さんとも、この話をしたことがあるんだけど、「それじゃあつまんないだろう?」と久米さんは言った。久米さんの言いたいことはすごくわかるんだけど、この年ぐらいのバラエティ番組は、VTRがあって、スタジオに戻って俺らがああだこうだ言ってまたVTRを挟んでっていうのがふつうだ。

ネットの人たちからは、「太田、自分の番組なのに出番少ねぇし」みたいな意見があったりするみたいだけど、実際の収録現場は放送時間の2倍から3倍ぐらいまわしていたりする。放送で使われるのがひとことふたことであろうと、収録現場の俺はとにかくボケまくっているから、自然と収録時間が延びてしまう。

「再生回数100万回」はテレビ視聴率1%

なぜ、そんな効率の悪いことをするのか? それは、いまのテレビの見られ方のひとつとして、こんなイメージが俺にあるからだ。仕事から帰ってきた人が、疲れたなぁ、テレビでもつけとくかとスイッチを入れる。つけとくかぐらいのテンションだから、真剣になんて見やしない。

たまたま画面に視線が移った時に俺がぎゃーぎゃーとくだらないことを言っている。その人は、「こいつ、あいかわらずつまんねぇな」と思う。人によっては笑ってくれるかもしれないし、いわゆる苦笑の類で「でもまぁ、こいつよりましか」とちょっとだけ仕事の嫌なことが忘れてもらえるかもしれない。

もうね、そんな感じのリアクションがもらえるだけでも、いまのテレビの役割のひとつじゃないのかなぁ。もちろん、コンビ名通りの爆笑をしてもらえれば最高だけど、微笑だろうが苦笑だろうが、とにかく見てくれた人が、ふっとひと息ついてくれただけでも意味のあることじゃないかと俺は思っている。

そもそもなぜ、俺はテレビの仕事にこだわりがあるのか? ひとつには、その影響力の大きさがある。「テレビはオワコン」だと断ずるネットの人たちがさかんに口にする「ネット上での再生回数100万回」だって、テレビの視聴率にしたらわずか1%なわけで、そんな数字なんてテレビだったら打ち切り候補だ。

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