退院したトランプ大統領の猛反撃はあるのか バイデン氏次男のウクライナ疑惑追及も争点に

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アメリカ政治をウォッチする専門家は今後の選挙戦への影響をどう見ているのか。

上智大学の前嶋和弘教授は、「トランプ氏が第2回の討論会(10月15日)に参加できるかは微妙だが、退院後は”自分はコロナに勝った大統領だ”とアピールするだろう。“コロナなんて大したことはない”と言うかもしれない。いずれにせよ自分の強さを示して、健康不安が大きいのはバイデン氏のほうだと主張するのではないか」と見る。

これに対してバイデン氏としては、「健康不安を払拭するため、討論会への準備を入念に行っていくことを重視するだろう」と前嶋氏は話す。

 前嶋氏は選挙戦の現状について、「野球にたとえるなら7回まで行ってトランプ氏が3点ぐらい負けている状況」と表現する。トランプ氏としては、全米各地で遊説や戸別訪問を積極化して挽回を図ることが10月の戦略だったが、コロナ感染によって「そうした地上戦を積極的にできない分、痛い」。その痛手を少しでも和らげるために「復活した大統領というイメージを強調しようとするだろうが、それでもまだ逆境」と分析する。

トランプ氏は入院中の医療施設内で執務している様子をビデオで見せたり、一時的に自動車で外出したりしていた。「自分が元気なことを演出したいのだろうが、(感染リスクを考えれば)ビデオの撮影者や車の運転者にとっては人権上の問題ではないか」と指摘する。

トランプ氏には共和党員からも冷徹な評価

丸紅経済研究所の今村卓所長は、「世論調査を見る限り、トランプ氏への同情票は今のところ意外と出ていない印象がある」と語る。

トランプ氏はこれまで、全米で20万人を超える死者を出したコロナ禍への対応で厳しい批判にさらされてきた。そのため同氏陣営は「コロナ問題を選挙戦の優先課題から外そうとしてきたが、自分が感染したことで最重要課題へ浮上してしまっている。しかも、『入院中によくコロナについて勉強した』と述べていたが、逆にこれまで何をやってきたのかと批判を浴びる形となっている」(今村氏)。

ロイターなどが10月2~3日に行った全米世論調査では、回答者の65%が「トランプ氏がコロナをもっと深刻に受け止めていたら、おそらく感染しなかった」と見ている。そうした見方は選挙人名簿に登録した民主党員では約9割を占め、登録共和党員でさえ約5割に上った。

「アメリカ国民は党派を超えて、『本当にこの人物に国を任せていいのか』と冷徹な評価を下している」と今村氏は見る。

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