コロナで医療界の苦境が15年前倒しになった 相澤孝夫・日本病院会会長が語る病院の将来

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相澤孝夫(あいざわ・たかお)/1947年生まれ。東京慈恵会医科大学卒業。信州大学医学部附属病院を経て、相澤病院院長などを歴任(現在は同病院最高経営責任者)。2017年6月から日本病院会会長(撮影:梅谷秀司)

――元に戻る保証がないというのは、どういうことでしょうか。

データがそろっているわけではないので断定はできないが、感染を恐れての受診の自粛のみならず、医療のあり方が変わってしまったケースもあるようだ。

たとえば手術のうちで緊急手術を除く一般的な手術の件数がなかなか元に戻らない。感染リスクを恐れての手術が延期されている事例がある一方で、手術から服薬中心へ治療法が変わっている可能性もある。がんなどの検診や人間ドックの手控えによって病気が発見されないままになっているケースもあると見られる。

外出自粛の長期化とともに交通事故による外傷やスポーツによるケガも大きく減っていることがデータで確認されている。手洗いやうがいの徹底により、学校や保育園でも風邪などの感染症も激減している。一過性の要因がある一方で、患者のニーズが変わっている面もある。コロナウイルス感染症の流行が一段落しても医療はかつての姿には戻らないのではないか。

病院の機能分化と連携が必要

――その場合、病院の経営は成り立つのでしょうか。

人口の減少によって15年から20年後に起きると考えていた事態が、コロナ感染症をきっかけに前倒しで押し寄せてきてしまったと考えている。患者が減る中で、医療提供体制や診療報酬は今のままでいいのかが問われている。

――どのような対応策が必要でしょうか。

コロナ診療での対応が参考になる。第1波が過ぎた後、コロナ患者を受け入れる「重点病院」や「協力病院」を指定する仕組みが導入された。コロナ患者受け入れに力を入れる病院がある一方で、一般医療に集中する病院もある。これは医療機能分化と連携の姿だ。

また、秋冬のインフルエンザとの同時流行期を前に今般、外来に関しても、発熱患者に対応する医療機関を明確にしたうえで、支援する仕組みが設けられた。こうした機能分化と連携の取り組みが、コロナ以外の一般医療においても求められている。

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