新型コロナウイルスの影響で、有料放送における勝ち組と負け組がはっきりと分かれ始めた。
好調だったのが、ケーブルテレビ最大手のジュピターテレコム(J:COM)だ。7月の定例会見で、井村公彦会長は「サービスによって凹凸はあるが、総加入世帯数は(1年間で)6万ほど上乗せできた」と胸を張った。同社はケーブルテレビに加え、固定電話、Wi-Fiなど通信事業も手がける。外出自粛に伴い、自宅における通信の必要性が増したことも追い風となった。
さらに、2019年からスタートしたOTTサービス(インターネットを介した動画配信・SNSなど)との連携も大きな後押しとなった。J:COMは動画配信最大手のNetflix(ネットフリックス)と提携。テレビにつなげるだけでケーブル放送や動画などが見られる機器、セットトップボックス(2019年12月新導入)でネットフリックスを視聴できるようにし、サービス利用料金の請求もJ:COMと一本化した。
新セットトップボックスでは、2020年5月の一世帯あたりの視聴時間が月間103時間となり、前年同月の65.3時間から大きく増加した。
その中身を詳細に見ていくと、103時間中39.7時間、実に約4割がOTTサービス・YouTubeの視聴時間だったのだ。20歳から34歳の年齢層に至っては、6割以上がOTTサービスやYouTubeが占める。「加入者は複合的な要因で伸びている。(ネットフリックスなど)OTTサービスとの連携もその1つだろう」(井村会長)。
スカパー!はプロ野球開幕延期が痛手に
動画配信とのタッグで順調なJ:COMに対し、動画配信の攻勢を受けているのが、衛星放送大手のスカパーJSATとWOWOWだ。
スカパーJSATは新型コロナの影響で、人気コンテンツであるプロ野球の開幕が延期されたことが大きな痛手となった。スカパーの8月末の加入者数は316万7735件と、前年同月末と比べて10万2000件減少。WOWOWも8月末の加入者数が277万142件と、前年同月末から12万3000件減っており、衛星放送事業者の厳しさがにじみ出ている。
スカパーJSATの米倉英一社長は、7月に行った東洋経済の取材に対して「巣ごもり需要を期待していたが、やはり動画配信との競争があった」と肩を落とす。WOWOWの尾上純一取締役も7月に行われた決算説明会で「コロナの影響に加え、動画配信サービスの普及により、お客様の視聴の選択肢が増えている」と加入件数が厳しい理由を分析する。
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