シシド・カフカが語るライブ活動の「現在地」 コロナで音楽をやめた人は周りにいなかった

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コロナ禍で音楽業界を含めさまざまな業界が深刻な打撃を受けた。経済活動がストップし、多くの人が自問自答した。非常事態にこの仕事は必要あるのか。社会におけるこの仕事の存在価値は? シシドはそんなことを考えることはなかったのだろうか。

「それを一番感じたのは3.11のときなんです。当時はまだデビュー前で(シシドは2012年デビュー)、何者でもない私は何もできないし、ミュージシャンを目指しているけど、これって本当に意味があるんだろうか? というのはすごく悩んだ。

非常時では、音楽って最初に排除されるものだと思うんですよ、娯楽だから。だけど、そのあとちょっと落ち着いたら最初に求めてもらえるものだということが、あのときわかった。

「先輩ミュージシャンの中には『ライブハウスを支援しよう』という動きも生まれていて、そういうのに対してちゃんと乗っかれる自分にならなきゃと思う」(撮影:今井 康一)

私は企業に勤めているわけではないので、お仕事をいただけなければお金が出ない。今回、周りのミュージシャンから『バイトを始めた』という話を聞いて、漠然と不安になることもありましたし、その一方で『やることがないのでアルバムをつくりました』と、一人で曲をつくってすべての楽器を演奏して、精力的に活動されている先輩もいて、勇気づけられることもありました。

みなさんさまざまでしたが、悲観的になって『音楽をやめます』という人は周りにはいなかったので、そういった意味では『みんなで頑張って乗り越えていこうね』『早くできるといいよね』と励ましあえて、底の底まで落ちることはなかったです。

自粛期間中、インスタグラムには留学中に撮ったブエノスアイレスの写真ばかりアップしていました。みんな家から出られないなら、こういう写真を見て癒やされたらいいなって。みんな自分のできる最大限のことをすればいい」

初めての配信ライブは「リハーサルみたい」

先が見えない日々。それでもコロナ前から10月に開催が決まっていたブルーノートでのライブ前に「何かできないか」と考えた中、無観客の有料ライブ配信を行った。8月のことだ。

el tempoは即興性や偶然性による一期一会を楽しむイベント。譜面もない。正解もない。間違える演奏者もいる。それらを飲み込んで生み出されるリズムを感じることに喜びがある。観客が「その場で体験すること」の意義は大きい。そんなイベントを配信することで、視聴者がどう感じるのか。それは、シシドにもメンバーにも想像がつかなかったという。結果は「まったく別物だと思いました」。

「これを言っていいのかわからないですけど、リハーサルみたいな(笑)。今までコンダクターとして背中を向けてたとはいえ、どれだけお客さんのパワーをもらってたかということを改めて感じました」

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