異常な米大統領選はどこまで織り込まれたのか 11月3日の投票日はもはや「ゴール」ではない

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一方、11月3日の投票日という大統領選挙の本来のゴールが、大きく後ずれする可能性が高まっている。各州で郵便投票が利用されることになったが、郵便投票では不利になるとされる共和党とトランプ大統領が、郵便投票の信用性に疑念を呈している。

さらに、郵便投票で有利とされる民主党からも、郵便投票の回収に時間がかかるため投票日に仮にトランプ氏勝利となっても、後から判明する郵便投票で逆転する可能性があるとの指摘が出ている。このため、投票日には、敗北を認めるべきではないとヒラリー・クリントン氏が発言している。

つまりこのまま接戦が続けば、大統領選挙の決着が後ずれすることになる。どちらが勝利するかだけではなく、いつ決着するかが不明な状況となり、株式市場もどのように備えるべきか非常に難しい状況にあると言える。

最高裁判事の早急な任命も波乱要因に

さらに、9月中旬以降、郵便投票を巡る問題を複雑化させる要因として、死亡したリベラル派重鎮であるルース・ギンズバーグ氏に代わる最高裁判事の任命に関して、9月27日にトランプ大統領は保守派のエイミー・バレット氏を指名した。

早急な決断によって、最高裁判事の布陣を保守派寄りに動かす試みをみせたことにより、トランプ大統領の支持層である保守派志向の有権者に広く自らの功績をアピールすることになった。一方、リベラル寄りの無党派層からの反発によって、反トランプの投票行動を強めるリスクも背負う。トランプ大統領の判断が、最終的に大統領選挙にどのように影響するか、筆者は正直わからない。ただ、大統領選挙を左右する、大きな変数が一つ増えて大統領選挙の行方はより複雑化した。

以上を踏まえると、今後の大統領選挙の展開を予想するのは難易度が高く、そして大統領選挙を巡る混乱が来年1月の年明けまで続くという異常事態すら想定される。金融市場の心理は、大統領選挙に前にかなりの「警戒モード」になっていることを念頭に置いて、株式市場への投資タイミングや、投資すべき株価の水準を考えることが必要だろう。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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