考えを文章だけで表す人は図の威力を知らない 無駄をそぎ落とし必要なことをわかりやすく
これらの図を使うと考えが深まる第1の理由は、情報の渦に溺れることがなくなること。そもそも紙1枚であり、長い文章も用いないのだから情報量はかなり限られることになるわけだ。
情報が多すぎると、それらを整理するだけに手いっぱいになってしまうばかりか、思考の低下をも引き起こしかねない。知識が「常識」になってそこから抜け出せなくなり、柔軟な発想も奪われるというようなことが往々にして起こるのである。
最初のうちは、新しい情報を得るたびに問題への理解は深まっていくだろう。新たな視点が、思考を刺激してくれるからだ。とはいえ、ある時点を境に情報量と思考量は反比例するのだという。
そういう意味で、1枚の紙の上の適度な情報量が「ちょうどいい」ということだ。
また当然ながら、図を書くと思考を可視化することができ、その結果、思考のモレや矛盾、弱点が明らかになる。誰にでも経験があるだろうが、頭で「わかった!」と確信したとしても、その論理は意外に「緩い」ことが多いもの。しかし図にすれば、そうした緩さが白日のもとにさらされるわけだ。
そしてもう1つのメリットは、記録として残せること。頭の中の記憶が消えたとしても、図にしておけば消えることはない。いつでもその図を取り出し、続きから考え、「思考のビルディングブロック」を積み上げていけるのである。
「ビッグ・ピクチャー」を捉えられる
1枚の紙の上で考えることのもう1つのメリットは、「鳥の目」に慣れること。1枚の紙に大事なことを描こうとすると、おのずと視座が上がって、その紙1枚がヌケやモレのない全体像、すなわちビッグ・ピクチャーになるからだ。
きちんと考えるためには、いま考えていることに対して影響を及ぼすすべての要素を、視野を広げて大きく捉える必要がある。もし視野が狭いと、その視野の外にあるなにかが影響し、想定外の事態を招きかねないのだ。したがって、基本は「考える範囲」=「影響が及ぶ範囲」ということになる。
「ビッグ・ピクチャー」は、影響がある範囲を切り取る境界線で定義されるべきだと平井氏は言う。ビッグ・ピクチャーを持てると、答えの精度が上がり、ミスを減らせるとも。
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