考えを文章だけで表す人は図の威力を知らない 無駄をそぎ落とし必要なことをわかりやすく
図は、新しい着想を得るうえでも役に立つそうだ。平井氏はそのことに関連し、有名な経済学者のヨーゼフ・シュンペーターを引き合いに出している。かつてシュンペーターは、「イノベーションはすでに存在しているものの新しい組み合わせ〈新結合〉によってもたらされる」と指摘したというのだ。
なるほど周囲を見渡してみれば、2つの要素の組み合わせで生まれたものはいくらでも見つかる。シャンプー(洗う)×リンス(ダメージケア)でリンス・イン・シャンプー。印刷機能部品×インク(消耗品)でカートリッジ。ロボット(機械)×ウェア(機能)でウェアラブルロボットスーツなどなど。
平井氏が大学のゼミ生と新規事業や新製品創出の議論をする際にも、異なるものの組み合わせによるさまざまなアイデアが出てくるそうだ。
・海上輸送中に、3Dプリンターで製品を作ってしまう工場船(輸送×製造)
・カメラで撮影した家の外を、家内の壁一面に投影し壁が消えてしまう家(撮影×投影)
・乗れば乗るほど健康になる車(移動×診断・治療)
という具合だ。つまり新しいアイデアをひねり出す際に、1枚の紙のタテとヨコになんらかの軸を取り、その掛け算のマス目をにらんで「なにか新しいものはないか?」と考えてみるということである。
図なしで組み合わせを考えるのは困難
興味深いのは、これを「図なし」で考えるのはとても難しいと平井氏が指摘している点だ。
2つの異なる要素をタテ・ヨコに取れば、紙を見ながらぱっと考えることができる。そればかりか、空いているマスもすぐ目につくだろう。ところが、これを箇条書きにするとどうだろう?
タテ・ヨコの要素が5つあるだけ、すなわち5×5の箇条書きになるわけだから、どこをどう見てなにを発想したらいいのかわからなくなるかもしれない。したがって、もしも3つ以上の切り口を組み合わせて発想を試みるなら、それらの要素を紙にバラバラと描いて眺めたほうが、箇条書きにするよりずっといい。
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