「飲酒運転した芸能人」の復帰を米国人が許す訳 「一度でも過ちを犯した人」に厳しい日本との差

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彼女は後に、「私はあの夜お酒を飲みすぎてしまいました」「夫がどうなるのか怖かったのです。もちろん、それが言い訳にしかならないのは知っています」「自分の仕事をしていただけの警官に、失礼なことをしてしまいました。心から謝罪します」との声明を発表している。しかし、逮捕時の映像はネットに出回ってしまった上、テレビでも放映されてしまった。

「明るい優等生タイプ」「ナイスでキュートな人」のイメージが強かっただけに、酒を飲んでのこの醜態は、彼女のキャリアに大打撃を与えるのではないかと危惧されたが、結果的にそれは起こっていない。それどころか、その翌年に公開された『わたしに会うまでの1600キロ』で、彼女はキャリア2度目のオスカー主演女優候補に挙がっている。

セカンドチャンスを与えるアメリカ人

彼女の逮捕を伝える記事の最後で、雑誌『Variety』は、読者に「セレブリティーの私生活での行動は、その人の仕事と分けて考えるべきでしょうか?それとも一緒に判断されるべきでしょうか?」と、問いかけている。

結果は、「仕事と私生活は別に考えるべき」が47.74%と、およそ半数。「スクリーン上のその人と、スクリーンの外でのその人を分けて考えるのは難しい」と答えたのは27.65%で、「これからによる」が24.61%だった。

つまり、アメリカでは、72.35%の人が、そのセレブリティーが私生活での態度をきちんと正すなら、映画やテレビで活動し続けるのを受け入れると言っているのである。

警察に止められた直後、ギブソンは、「俺の人生はもう終わりだ」と叫んだそうだ。実際、彼は強い絶望を感じたのだろう。しかし、ほかのケースより深刻だった彼ですら、終わりにはならなかった。もちろん、今でもその時のことを忘れられず、彼が大嫌いという人はいると思う。それでも、彼はとりあえず、映画界で自分の仕事をすることができているのだ。

アメリカ人は、カムバックストーリーが好きだ。一方で、日本人は一度失敗した人に厳しく、セカンドチャンスをもらうのが非常に難しい傾向にある。山口達也の件に関しても、「彼の芸能人生はもう終わり」「もう復帰は無理」というようなコメントが多数目に付いた。だが、ちゃんと反省し、罪を償ったならば、その人には新たなチャンスをあげてもいいのではないか。

山口達也をかばう気はないが、彼のキャリアのこれからは外野がとやかく言うのではなく、本人の今後の努力で決めさせてあげればいいのではないかと思ってしまうのである。

猿渡 由紀 L.A.在住映画ジャーナリスト

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さるわたり ゆき / Yuki Saruwatari

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒業。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場リポート記事、ハリウッド事情のコラムを、『シュプール』『ハーパース バザー日本版』『バイラ』『週刊SPA!』『Movie ぴあ』『キネマ旬報』のほか、雑誌や新聞、Yahoo、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。

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