「PCR受診で住宅ローン借りられない」説の真実 団信「告知義務違反」の誘惑と違反者の末路

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新型コロナウイルス感染症にかかると、後遺症が残る場合があるといわれています。完治したとしても後遺症で通院が続いているようだと、団信への加入を断られる可能性はあるでしょう。

いったん完治したように見えて再発するケースもあるようですので、退院後や自宅療養終了後も一定期間は保険に加入できないようにするほうが保険会社としては安全です。感染が拡大してまだ1年も経っていないわけですから、積極的に罹患者に対して保険加入を許す姿勢にはならないと考えられます。

今後、発症者に対する有効なワクチンが開発されるなど状況が変われば、完治後ただちに団信申し込みとなっても問題なくなるでしょう。

告知義務に違反して借りるリスク

筆者が管理しているWebサイトの人気記事に「団信の告知義務違反」があります。年間にすると約150万回検索されている計算ですから、いかに団信の告知義務違反が悩ましいテーマか、おわかりいただけるのではないでしょうか。

10年前のことですが、筆者が住宅ローンの勉強会で団信の話をした際、不動産会社の方から団信の告知義務違反に関する話を聞くことができました。頭に手術痕が生々しい人であっても団信の告知をせず住宅ローンを借りたという話です。

不動産会社は、住宅ローンの審査が通らなければ売り上げが上がりません。銀行は、住宅ローンを貸せなければ金利収入が得られません。窓口で対応する銀行員も知らぬふりをしていたということです。

団信に告知義務違反をして住宅ローンを借りた場合のリスクは、(1)告知義務違反が判明した場合に住宅ローンの全額返済を求められる、(2)死亡、高度障害など団信の支払事由に該当しても保険金が支払われず、住宅ローンの支払いが遺族に引き継がれる、という点です。

これらのリスクの先は何があるのでしょうか。想定されるのは、以下のようなケースです。

・支払い能力のない遺族に借金が残る。
・住宅ローンの全額返済ができないため、自宅を売ることになる。
・「住宅ローンの残高 > 自宅の売却価格」の場合、借金だけが残る。
・債務整理などを行うことで、それ以降の借り入れやクレジットカードの保有が制限される。
・債務整理の方法によっては一定の職業に就けなくなる。

このようにいろいろと恐ろしい事態が待っているわけです。団信の告知義務違反の責任は、住宅ローンを借りた人とその家族に課されます。貸し手の銀行、売り手の不動産会社が対応することはありません。

銀行が団信の告知義務違反をわざと見逃していた事実が判明すれば、何らかの対応をしてもらえる可能性もあるでしょう。しかし、あえて団信の告知義務違反をしようとしている借り主に対して、銀行や不動産会社が自分たちの不利になるような証拠を保存するメリットはありません。売り手や貸し手の悪しき助言の証拠を捕らえることはできないのです。

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