「PCR受診で住宅ローン借りられない」説の真実 団信「告知義務違反」の誘惑と違反者の末路
筆者のお客様の中で、団信の告知について悩まれた方がいます。
このAさんには健康診断結果に指摘事項があり、通常であれば団信に記載が必要でした。筆者が相談を受けた時点では、不動産会社から告知義務違反を勧められていました。筆者は「告知義務違反は辞めるべき」と伝え、告知義務違反が判明した場合のリスク(前述)を説明したところ、住宅購入をいったん保留することになりました。
その数カ月後、Aさんはがんと診断されました。健康診断結果の異常を再度検査したところ、悪性新生物の診断となったのです。このタイミングでAさんからお礼のメールが届きました。「あのとき、告知義務違反をしてまで住宅を買わないでよかった」。短い文面でしたが、断固反対を貫いてよかったと思いました。
実は、ご家庭の夢であるマイホーム購入を打ち砕いてしまったことに少なからず後悔をしていました。おそらく告知義務違反が判明するケースはそれほど多くない、むしろまれ。黙って買ってしまえばいいのではないかと思っていたのです。人の人生設計に口出しして、夢を叶えないなど余計なお世話ではないのかと悩みます。
団信については、通常の生命保険販売と比べてコンプライアンスがザルといいますか、誰も責任を取らない体制であることが気になります。例えば、保険ショップで告知義務違反をして、のちに告知義務違反が発覚した場合は、販売した担当者が罰せられます。販売した店舗、販売した会社にも相応の処分が保険会社から下されます。
一方、今の団信は「告知義務違反した者勝ち」の状況といえます。一定の割合で保険金支払事由に該当した場合に、運が悪かっただけのように評価されてしまいます。
「団体信用生命保険 告知義務違反」とWeb検索すると、サジェストワードとして「時効」が表示されます。つまり、見つからなければ問題ないし、最悪見つかっても時効扱いでおとがめなしになるには何年平穏であればいいのか、と調べる人たちがいるのです。
金融庁直轄の保険業界では、保険の告知義務違反は言語道断です。しかし、不動産販売は国土交通省の管轄です。住宅ローン自体は金融庁のテリトリーですが、団信販売が適正化される動きは見えません。縦割り行政の弊害なのか、団信の取り扱いはひどい状況です。
一生に一度の買い物を諦めることができないのは仕方ないのですが、実際に告知義務違反をした人はどうなるのでしょうか。
積極的な告知義務違反で住宅ローンを借りると…
こんな事例もあります。先日、1本の電話を受けました。「団信の告知義務違反について」ということだったので、不動産会社が抜け道を知りたくて質問してきたのかと思いました。電話の主は、今回のテーマである「団信に告知義務違反をして加入した人」でした。
話を聞いてみると、現在メンタル不調で就労できない状態となり、団信の就労不能条件に適合するとのこと。しかし、住宅ローンを借りる前からメンタル不調による通院を続けており、告知義務違反であることはBさん自身が認識していました。
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