共通テスト「日本史」で高得点を取る4つの戦略 「問題内容の変化」を正しく把握しよう

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しかし、共通テストでは、応仁の乱について、以下のように問われたのです(一部を簡略化・修正しています)。

問 15世紀についてX・Yのような評価もある。それぞれの評価を根拠づける情報を選ぶ場合、評価と根拠の組合せとして最も適当なものを、下の①~④のうちから1つ選べ。(選択肢①~④は省略)
評価
X この時代は「政治的に不安定な時代」である。(Yは省略)
根拠
a 並立した2つの朝廷を支持する勢力が武力抗争し、また、その一方の内紛などもあって内乱は長期化した。
b 全国の大名を二分した大乱は終結したが、地方には新たな政治権力も生まれ、地域的な紛争は続いた。
(c・dは省略)

さて、正しい組み合わせは、X-aなのか、X-bなのか。実は、「歴史に関わる事象を多面的・多角的に考察する」ことは大学入試センターが強調している点でもあり、ある時代に対する異なる評価とその根拠を問うという、目新しい形式となってします。

しかし、問われているのは、根拠のa・bが「15世紀」(室町時代中期・後期)という時代なのかどうかです。aは、「並立した2つの朝廷を支持する勢力」「その一方の内紛」から、南北朝動乱を示していると判断しますが、これは14世紀なので、「15世紀」という時期と一致しません。

14世紀を、鎌倉幕府の滅亡(1333)、建武の新政、室町幕府の成立と南北朝動乱、室町幕府の支配確立(足利義満の時代)、という大きな枠組みで捉えることができている受験生にとっては、判断が容易です。しかし、一問一答式の丸暗記しかしていない受験生は、こういった時代の全体的な把握が不十分で、判断を誤ることが多いのです。

一方、bは「全国の大名を二分した大乱」「地方には新たな政治権力」が、応仁の乱(1467~1477)の後の戦国時代のことを示していますし、15世紀ですから時期も当てはまります(X-bが正解)。

時代像を100年単位でつかんでいく学習が有効

共通テストでは、こういった抽象的な選択肢の文章から具体的な出来事を思い出して、どの時代のことなのかを特定する、といった複雑なプロセスが必要であり、センター試験よりも難度が増しているといえます。日常学習のときから、

⑴ 西暦年代よりも、世紀を軸とする時代感覚を意識し、歴史的事象の時期をつかむ
⑵ 具体的な歴史的事象を、まとめて抽象化し、ある時期の時代像を把握する

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といった姿勢が求められているといえます。世紀ごとの枠組みで囲った年表を作成し、時代像を100年単位でつかんでいく、という学習は、非常に有効です。これにより、問題にある抽象的な文から具体的な歴史的事象を想起し、時期を特定することができるようになるのです。

落ち着いて受験勉強に取り組みにくい状況が続くなか、焦りや落ち込みも出てくるかもしれません。しかし、「共通テストもコロナ禍も初めてのことだし、合格した先輩たちと同じようにいかなくて当たり前」など、気楽にかまえてもよいと思います。日々やるべきことをやり続けていく「集中力・持久力」を意識して、目標に向かっていきましょう。

山中 裕典 河合塾講師、東進ハイスクール・東進衛星予備校講師

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やまなか ひろのり / Hironori Yamanaka

大学・大学院では日本史学を専攻。私立中高一貫校の教員を経て現在、予備校で東大・京大などの難関国公立大や早慶等の難関私大対策講座を担当。とくに、論述式問題の対策指導は圧倒的な支持を得ている。「歴史の全体像をつかみ、動きをイメージできれば、覚えた知識が使いこなせるようになる」が授業のモットー。

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