中国に進出している欧州企業は、以前からの市場アクセスの問題に加えて、最近は人材確保の難しさや政治リスクの高まりなど新たな課題に直面している。にもかかわらず、過半数の欧州企業がなお中国での投資拡大を模索しているとの調査結果が発表された。
この調査は在中国欧州連合商工会議所(EU商工会議所)が実施したもので、中国の市場環境に対する欧州企業の意見をまとめた年次の「ポジションペーパー」(建議書)のなかで結果が明らかにされた。
9月10日に公表された建議書は、今年度も中国の市場アクセスの問題を最重要のテーマとして取り上げた。中国政府は2020年6月24日、外資の参入を制限または禁止する項目を列挙した「ネガティブリスト」の改訂版を発表。改訂前のリストから7項目を削除したものの、依然として33項目への制限・禁止を継続している。
EU商工会議所によれば、今回削除された7項目は欧州企業にとって実質的な意義があまりない。一方、規制が継続された33項目は多数の業種を対象にしており、なかでも法的サービスや通信サービスなどの分野は欧洲企業が引き続き参入を望んでいる。今回の調査では、EU商工会議所の会員企業の62%が、中国政府が市場アクセスを改善したら「投資を拡大したい」または「投資を拡大する可能性がある」と回答した。
新型コロナで外国籍社員の復帰困難が問題に
今回の建議書で注目されるのは、新たな重要テーマの1つとして人材確保の問題を取り上げたことだ。「外資系企業は過去には中国のトップクラスの人材を選んで採用できたが、現在は中国企業との激しい人材獲得競争にさらされている。このため、外国籍の人材を中国に派遣して事業に参画させる必要性がさらに高まっている」。建議書はそう指摘した。
だが、外国籍の人材に対する中国政府の就業規制はEU各国に比べてはるかに厳しい。さらに新型コロナウイルスの流行の影響で、外資系企業の多数の外国籍社員が中国の職場に戻れない状況が続いている。EU商工会議所の上海支所が2020年7月に行った調査によれば、外国籍社員の復帰困難が原因で「売り上げにマイナスの影響が出ている」と回答した会員企業が全体の40%、「研究開発に影響が出ている」との回答が29%に上った。
中国での事業が(外交関係悪化などの)非ビジネス的要素に阻害されるケースが増えていることも、今回の建議書が取り上げた新たな問題の1つだ。EU商工会議所の調査では、会員企業の43%が「過去1年間でビジネスがますます政治の影響を受けやすくなり、経営へのプレッシャーが増している」と回答した。
(財新記者:王力為)
※原文の配信は9月11日
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