資金ショートで事業活動の停止に追い込まれていた中国の新興EV(電気自動車)メーカー、拜騰汽車(バイトン)に起死回生のチャンスが巡ってきた。9月9日、バイトン支援の目的で受け皿会社の南京盛騰汽車科技が設立されたのだ。事情に詳しい関係者によれば、盛騰汽車科技が調達する約20億元(約310億円)をバイトンの最初のモデルである「M-Byte」の研究開発と生産準備に投入し、早期の量産を目指すという。
バイトンはドイツ出身のダニエル・キチャート氏らが2016年に創業し、当初はM-Byteを2019年末までに量産する計画だった。しかし、5億ドル(約530億円)規模のシリーズCの資金調達がもくろみどおりに進まず、資金不足による経営危機に陥った。2020年6月30日、バイトンは中国での事業活動を一時的に停止し、6カ月をメドに経営構造のリストラクチャリングを行うと明らかにした。
前出の関係者によれば、新会社の盛騰汽車科技を設立して新たな資金調達を行い、そこからバイトンに「輸血」する方法が、最終的なリストラ計画として採用された。この計画はバイトンの株主でもある国有自動車大手の中国第一汽車集団(略称は一汽集団)が立案したものだ。
2021年8月の量産開始は困難との見方も
法人登記簿に記載された盛騰汽車科技の登録資本金は15億元(約232億円)。株主欄には一汽股権投資天津、南京興智科技産業発展、盛屯集団という会社名と、段連祥という個人の名前が並ぶ。3つの会社はいずれもバイトンの既存株主であり、一汽股権投資は一汽集団のグループ企業、興智科技産業発展は南京市政府の傘下企業だ。段連祥氏はバイトンの研究開発担当の副総裁で、盛騰汽車科技の総経理(社長に相当)に就任した。
財新記者の取材に応じたバイトン関係者によれば、南京市政府は盛騰汽車科技に約1億5000万ドル(約159億円)、一汽集団は約5000万ドル(約53億円)を出資する意向だという。なお、財新記者は南京市政府に確認を試みたが、コメントは得られなかった。
とはいえ、仮にこのリストラ計画が実行されても、バイトンが無事量産にこぎつけ、市場で一定の地位を築けるかどうかは未知数だ。前出の関係者によれば、バイトンの従業員はすでに大部分が離職。M-Byteの量産に必要な資金の具体的試算もまだ行われていない。バイトンの株主は今回、2021年8月前後の量産開始を新たな目標として定めたが、M-Byteの開発は一部がまだ完了しておらず、間に合わせるのは困難との見方もある。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は9月10日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら