「インフルエンサー」は本当に使えるのか? なぜ、あの人のクチコミは影響力があるのか(2)

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インフルエンサー研究の多くは、あるモノサシで消費者を分類した場合のトップ数パーセントを占める、一握りの特別な存在に着目していることはすでに述べました。

「インフルエンサー」と呼ばれる特別な消費者にクチコミ情報を提供すれば、効率よく一般消費者にクチコミが普及する、というのがインフルエンサー・マーケティングの考え方の基本です。しかし、一般消費者は、高度な専門知識を持つインフルエンサーのクチコミを求めているのではなく、「少し上」の人の意見を聞きたいことが明らかになりました。クチコミの普及には前述のケラーとベリーの著書が想定するような中央集権型インフルエンサーではなく、多数の「草の根インフルエンサー」が貢献しているのです。

特別にカテゴリー知識を持った消費者や、極端にリンクを持った消費者は確かに存在します。ただし、彼らが伝播のカギを握っているかどうかは、別問題なのです。ソーシャルメディア上のクチコミの伝播を考える際には、インフルエンサーに代表されるキーパーソンとその属性だけでなく、クチコミ発信者とクチコミ受信者の置かれた社会的関係など、クチコミの文脈を考慮した視点が重要です。そうすると、多数の草の根インフルエンサーの活躍で製品・サービスが広まる姿が見えてきます。

山本 晶 慶應義塾大学ビジネス・スクール 准教授

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やまもと ひかる

 やまもと ひかる 慶應義塾大学ビジネス・スクール准教授。東京都出身。11歳から15歳まで米国ニューヨークで過ごす。
外資系広告代理店勤務を経て、2001年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。2004年同大学院博士課程修了。博士(経済学)。成蹊大学経済学部准教授を経て、2014年4月より現職。専門はマーケティングで、主に対人影響の研究に従事。日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会(幹事)、日本商業学会、INFORMS、AAAI、AMAの各会員。著書に『コア・テキスト マーケティング』(新世社)、「Webマーケティング」『人工知能学会誌』、『知覚認知率がクチコミ受信意向と購買に与える影響(共著)』などがある。

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