パチンコ産業の憂鬱、過熱する版権争奪戦--あの名作がパチンコに登場する舞台裏
版権保有者にとって財務基盤の強い遊技機メーカーからの許諾料はおいしい収入源。パチンコ版権に詳しい大手広告代理店の幹部は、「最近では過去の人気アニメのリメークや続編がパチンコと連動しているケースが多く、制作委員会を立ち上げる際、パチンコの許諾料収入を当てにしている」という。
ある遊技機メーカーの幹部は「版権パチンコに起用するコンテンツのさまざまなコラボレーションイベントなどの費用も、遊技機メーカーが出すケースもある」とこぼす。
テレビ局や出版社といった構造不況業種のメディアや、DVDが売れなくなったアニメ制作会社、CDの販売が落ちた音楽会社、芸能事務所などがパチンコマネーに群がっている構図だ。
版権パチンコがない時代にはゼロだった許諾料の支払いに加えて、高精細な液晶部品などパチンコ機の高機能化もあり、メーカーの開発費は増加の一途。有力メーカーの遊技機は、3年前で定価が30万円前後だったが、「この3年で10万円近く上がっている」(矢野経済研究所の石川誠主任研究員)。
遊技機の価格高騰は、パチンコホールの経営も圧迫している。ホールは遊技機の入れ替えコストを回収しようと、なるべく高い利益が出る投機性・射幸性の高い台を選ぼうとする。しかし、「それでは台の稼働率が落ち、客数減につながりかねない」(石川氏)との指摘もある。
最近では、従来の4分の1の貸玉料である「1円パチンコ」を導入するパチンコ店が急増。旬を過ぎた機種や中古機が続々と活用されている。この動きは、高額な新機種を買えないパチンコ店が、客数減を食い止めるため苦肉の策に出ているとの見方もできる。