Knotが上質な国産腕時計を1万円台で出せる訳 「社長解任」の辛酸を舐めた男が創ったブランド

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――日本の時計業界が抱える業界構造のどこに問題を感じますか。

腕時計業界は、世の中の大きな消費の流れと、思いきり“逆行”していることが問題だと考えます。洋服業界ではUNIQLO(ユニクロ)やGAP(ギャップ)、メガネ業界ではJINS(ジンズ)やZoff(ゾフ)、家具であればニトリなどが、流通を改革することで、高品質なものをリーズナブルな価格で提供しています。

一方で時計業界の問題は、流通、チェーンストアにあります。大手家電チェーンを中心に、大体定価30万円の腕時計が、3割引の21万円などで販売されている。定価の通りに売っているお店なんて、誰も見たことがありません。下手をすれば独占禁止法に抵触してもおかしくないようなことが半世紀にわたって、なあなあにされてきています。

また、SNSなどの情報が発達することによって、今まで業界の人間しか知らなかったような情報がどんどんバレてしまう時代となり、“ごまかし”が通じない時代になってきました。

この2つが合わさっているにもかかわらず、時計業界だけは、相変わらず同じ仕組みで成り立っている。つまり製造原価1万円のものに定価20万円をつけよう、というように。

ベルト交換が手軽にできない既存の腕時計

――スマホを持つようになり、若者の腕時計離れが加速しているなか、腕時計だけが相変わらず10万円も20万円もしている。メーカー主導の業界構造が、時計業界として改革をしなければいけない問題ということですね。「時計は本体とベルトがセット」という固定観念がありましたが「Knot」はそこに切り込んで、本体とベルトを自由に組み合わせられるようにしました。

実は時計のベルトを自分で簡単に付け替えられる仕組みは半世紀近く前からあります。FRANCK MULLER(フランク ミュラー)は、これを純正で採用していますが、ほかの時計メーカーはほとんど使っていません。

断定はできませんが、理由は、時計メーカーが困るからだと私は考えています。ベルトは切れたり傷んだりする消耗品のため、お客さんは時計屋さんにベルトを交換しに来ます。そこでまた、新しい時計をセールスするチャンスがあります。メーカーは、あえて専用工具を使わないとベルトを替えられない仕組みにしてあり、工賃で3000〜4000円も頂戴していました。Knotが1万円台の時計にこの仕組みを純正採用したことで、業界の方々は困ってしまっていると思います。

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