Knotが上質な国産腕時計を1万円台で出せる訳

「社長解任」の辛酸を舐めた男が創ったブランド

遠藤社長が高校生時代に初めて自分で買った腕時計はカシオ「G-SHOCK」。当時はモノ雑誌を読みふけっていたという(写真:新潮社)

――時計業界のタブーに斬り込んだということですね。

腕時計は、技術畑の人がすごく多い。時計に限らず、機械や工業製品が世界的に発展してきた背景には、戦争の歴史が関係しています。

腕時計の歴史も、例えば「防水時計」は海軍が潜れるように作られ、「クロノグラフ時計」は、空軍が爆弾を落とす時間を正確に測れるように作られました。

このように、腕時計の機能はどんどん発達してきましたが、今はもう軍需品としての需要はありません。それなのに各メーカーは、いまだに「今回1000メートル潜れる時計を開発した」とか言います。

「俺ってすごいだろう」という作り手の勘違い

――そんなに潜る人はいませんよね(笑)。

「電波時計の誤差は10万年に1秒」と言われていますが、それ、誰が確認するの(笑)。でも時計業界の人は誰も突っ込みません。誤差10万年に1秒の、一般の人が着用するうえでは明らかにオーバースペックの技術を手に入れるために、消費者は20万円払わないといけません。私なら、誤差が3日に1秒あってもいいから、手の届く価格で時計を買いたい。「こんな技術を考えた俺ってすごいだろう」というような、メーカー側の勘違いがあると思います。

『つなぐ時計―吉祥寺に生まれたメーカー Knotの軌跡― 』(新潮社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

「Knot」というブランドネームとファーストモデルは、当時高校3年生だった私の娘の意見が強かったんです。創業当時、資金の問題で作れる時計の種類が限られていました。5色中3色は男性用、2色は女性用というバランスで考えていましたが、「アラフォーのおじさんが、女子にウケる色なんてわかるはずないでしょう。消費者の声、世の中の需要を反映した腕時計が日本の時計マーケットにほとんど見当たらないから、若者の時計離れが始まっている。今の日本の時計メーカーとは真逆を行くメーカーをつくりたいのであれば、女性用の色は私に決めさせなさい」と娘に言われました。娘が作った色は、いまだにトップ3に入る人気モデルです。

(後編に続く、9月17日配信予定)

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