「コロナ禍で生活破綻する人」が陥りがちな失敗 ピンチの時こそ「中長期の視点」を持つ

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軽い気持ちで民間の金融機関に借り入れをしてしまうと、すぐに支払いがはじまり、非常に高い利子を支払うという厳しい条件になります。安易に借金をすると、まさに負のスパイラルに陥ってしまうのです。公的な支援を受けるためには、相談・申請といったステップが必要ですが、その手間を惜しんではいけません。

マネジメントの父であるドラッカーは、短期的目標と中長期的目標のバランスの重要性を説いています。本書で示した家計管理法で当面の短期的目標(3カ月)を乗り切ったら、これからの人生を中長期的目標(3年)でとらえる訓練をしましょう。

<3年あればできること>
・事業が軌道に乗るまで、3年
・新入社員が一人前になるまで、3年
・病気が完治するまで、3年
・200万円を貯めるまで、3年

このように、短い時間ではできなかったことも、3年あれば可能です。数カ月では難しくても、3年スパンで考えてみると、乗り越えられる気になるから不思議なものです。

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コロナ禍は、1年から2年は完全終息しないといわれています。では3年たったらどうでしょう。3年先の未来には、光が差しているように思えます。人生を3年単位の中長期でとらえてみましょう。なかにはうまくいく3年間も、平穏な3年間も、どん底の3年間もあるでしょう。

物事を中長期で考えると、自暴自棄な行動をせずにすみます。お金に困った経営者は、質の悪い仕事を受けてしまいます。利が薄いどころか赤字になる案件を、目先のお金ほしさに受けてしまうのです。売り上げ1000万円、経費1500万円かかるような仕事を、です。

3年先どころか数カ月先を予想すれば、「借金が500万円増える」と、小学生でもわかります。でも、受けてしまうのです。

家計の状態や事業の経営状態がよくないときこそ、「長期的に考えたらどうかな」「3年後、どうなっているかな」とみずからに問うて行動してみてください。

収入が10%になっても続ける道を模索する

このたびのコロナ禍や災害などで、かなりの収入減に見舞われる方が多いでしょう。苦しい時勢下でも、なんとか「やめずにまわす」方向で考えることが大切です。 どこまで粘れるかをきちんと見極めて、ギリギリまで粘るのが何より大切なことです。たとえ売り上げが10%になったとしても、その10%でなんとか経営をまわしていく、という意識でできるところまで続けてみましょう。

家計においても、お金の流れを止めないことです。フリーランスであれば、たとえ仕事の依頼がなくなったとしても、アルバイトで数万円でも稼ぐことができれば、収入ゼロという事態を避けることができます。廃業を考える前になんとか細く家計をまわすことを考えていきましょう。

会社員であれば、次の収入のあてもないのにかんたんに会社を辞めないこと。会社を辞めずに副業を探り、次の仕事を見つけるのです。ふだんから、フレキシブルな家計にしておけば、それができるはずです。

林 總 公認会計士、明治大学特任教授

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はやし あつむ / Atsumu Hayashi

外資系会計事務所、監査法人を経て独立。『餃子屋と高級フレンチではどちらが儲かるか』(ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(中経出版)、『正しい家計管理』(WAVE出版)ほか著書多数。家計も会社経営も子どもの教育も目的は同じで、「お金」に振り回されるのではなく、「満足度の高い人生」を送るために使うべきだと説く。4人の息子の父親であり、会計のプロでもあることから、独自のアドバイスを展開している。

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