生物が「オスとメスとに分かれた」究極の理由

多様性を求めたからこそ人間は絶滅から逃れた

無性生殖=クローン増殖だと、同じ遺伝子コピーを持った個体ばかりになって多様性がありません。そのため、環境変化に耐えられずに滅んでしまう確率が高い。もちろん無性生殖する生物でも、遺伝子の突然変異、すなわちDNAのコピー・エラーによって、新たな遺伝的変異を手にすることはあります。しかし、その頻度は極めて低く、急激な環境の変化にはついていけません。

そんな中で、生物が編み出した戦略が、個体同士でお互いに持っている遺伝子を交換して新しい遺伝子セットを生み出すという「有性生殖」だったのです。ここで有性生殖の進化原理として「赤の女王仮説」が出てきます。これは「生物は進化し続けなければいけない」という仮説です。

ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王は、その場にとどまるために、全力で走り続けます。それは生物が変わり続ける自然環境の中で、自分の立ち位置を維持するために変化し続けることと似ています。そこから名付けられました。

生物の誕生はまさに「奇跡の連続」

そもそも生物とはどのように誕生したのか。最新の研究データに基づけば生物誕生はまさに奇跡の連続の産物だったとされています。その説のひとつに「ジャイアント・インパクト説」があります。

今から45億5000万年前、誕生して間もない地球に火星と同じ大きさの星が衝突するという一大事変が起こりました。この衝突によって地球の一部がえぐり取られて、宇宙空間で固まって地球の周りを回る衛星ができました。月の誕生です。ぶつかった衝撃で灼熱のマグマの塊となった地球と月は徐々に冷やされていき、地球上では水蒸気が雨となって降り注ぎ、今から43億年〜40億年前の間に海が誕生しました。その間も地球には無数の隕石が落下を続け、生命の原材料となるアミノ酸などの有機物が隕石とともに海中に持ち込まれたと考えられています。

当時、月は今よりずっと地球の近くを周回していて、その引力によって、海は激しく波打ちました。この波動の中で、海中に溶け込んでいる分子同士が結合して、遺伝子=DNAの基となる「核酸」といわれる物質が生成されました。そして高い波によって常に波打ち際に漂い続ける無数の「泡」の中で、この核酸という物質が取り込まれて濃縮し、核酸同士が鎖状につながり、DNAが偶然に合成されました。このDNAこそが自身のコピーを作る能力を持つ物質であり、生命の「核」となったのです。

最初の生命は膜の中でDNAのコピーを作るだけの単純なユニットでしたが、やがてDNAの情報からタンパク質が合成されるシステムが完成し、タンパク質から細胞というDNAの入れ物が作られ、単細胞生物が誕生しました。このとき細胞同士の増殖競争が始まりました。よりたくさんのコピーを残したものが勝ち、という「生物の基本原理」の登場です。正確にはDNAが誕生したときからDNA同士の増殖競争は始まっていました。ですが、単細胞生物が誕生したことにより遺伝子同士の競争が、生物同士の競争に置き換わったわけです。

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