生物が「オスとメスとに分かれた」究極の理由 多様性を求めたからこそ人間は絶滅から逃れた

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なぜ人間を含む多くの生物は「オスとメス」に分かれたのか?(写真:町田たかし/PIXTA)
なぜ生物の多くがオスとメスに分かれたのか? 『NHKクローズアップ現代+』の解説を務める一方で、『全力!脱力タイムズ』などさまざまなメディアに出演する異色の生物学者・五箇公一氏による『これからの時代を生き抜くための生物学入門』より一部抜粋・再構成してお届けする。

最初に性とはなにか? みんな考える設問ですね。ほとんどの生物にオスとメスがいて、人間なら卵子と精子が接合することで子ども、子孫が生まれるという「有性生殖」を行っています。

生殖には「有性生殖」と「無性生殖」の2種類があります。無性生殖は自らの分身を作る形で増える方法で、いわゆる「クローン繁殖」のこと。アメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシ、イソギンチャク、クラゲ、昆虫類、ダニ類など、どちらかというと進化の歴史上、古めの生物によく無性生殖が見られます。一方、われわれ人間を含め脊椎動物だと「無性生殖」はあまり見当たりません。

少なくともわれわれが日常で目にする生物は植物でも動物でも性がある有性生殖が一般的。でも考えてみれば、なんでメスとオスという性が存在するのか、不思議に思えませんか?

単純に増えることだけ考えれば、無性生殖の方が効率はいい。オスの存在なんて必要がなく、自らを分裂させて、あるいは自らのコピー遺伝子を持った卵を生んで増殖ができる。でも、増やす効率は一番いいんですが、同じ遺伝子セットのコピーを繰り返すため、増えた個体間には変異がない。環境が安定していればそれでも問題はないのですが、水質が悪くなる、気温が高くなる、エサが不足するなどの環境の悪化が起これば、全個体が適応できずに共倒れ=絶滅してしまいます。

原初の生物は「性別がなかった」

地球の歴史を振り返ってみると、生物の原初は無性生殖の方が優勢だったと考えられます。しかし、地球環境の変化が起こるたびに、適応できなかった無性生殖生物は滅び、一方で手間のかかる有性生殖生物の中から適応できる個体が生き残る、という淘汰が繰り返されてきた。その歴史の中で、性を持つ生物が高等生物の中では一般的になったと考えられます。

もともと性ができた究極要因は、遺伝子を交換=シャッフルして、多様性を高めることだったのです。

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