オリンパス、「カメラ事業」の復活に必要な条件 JIPの買収によって、「VAIO復活」の再来なるか

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オリンパスがJIPに事業売却をするのは今回が初めてではない。2012年には携帯電話販売代理店「ITX」を売却している。このときからほかの事業に関しても定期的に議論を重ねてきた背景がある。その中で映像事業を「外に出すべきか、否か」というテーマが上るようになり、今年の年明け頃から本格的に売却の検討が始まった。

「独自の特徴・技術力があることはもちろん、オリンパスの竹内康雄社長らトップが事業を継続できる形で送り出したいという意思があり、また現場の人たちも技術について熱意を持っていることがわかった。だからこそ買収を決めた」(稲垣氏)

今後のカギを握る人材確保

デジカメを含む映像事業に所属するオリンパスの中堅社員も親会社が変わることに一筋の希望を抱いている。「カーブアウト後はJIPのもと十分なリソースを割いてもらえるようになるのではないか」という期待だ。一方で、映像事業の人材がすべて移行するかは決まっていない。

「映像事業の技術が主力の内視鏡技術に生かせる」(オリンパスの笹宏行前社長)など、社内では映像事業が医療機器事業にシナジーを生むという意見が強かった。実際、オリンパスでは数年前に映像事業の人員を本社管理部門など他部門に移管したとされている。その狙いは、映像事業の赤字体質を改善するためだけでなく、映像事業のノウハウを医療機器事業などに移管するためでもあったとみられる。

オリンパスの医療機器事業にとっても映像事業の人材は重要ということだ。実際、JIPも買収とともに優秀な人材獲得ができないことを懸念しており、「大企業からのカーブアウトで課題になるのは、カーブアウト先に研究開発人材がついてこないこと。この件に関してはオリンパスと交渉中だ」と稲垣氏はいう。

一方、今回のカーブアウトについてデジカメ業界に詳しいあるアナリストは懐疑的な意見を寄せる。「VAIOのように売上高200億円、営業利益7億~8億円程度ならJPIでなくともコスト削減さえ行えば達成できる」としたうえで、「問題は事業拡大や新規分野への参入だ。デジカメ市場はプロ・ハイアマ向け製品しか生き残れなくなっている。その中で、マイクロフォーサーズをプロ・ハイアマが積極的に購入するとは考えにくい。また、VAIO並みの業績がでるようコスト削減をすれば監視カメラなどビジネス向けを製造する規模を保てない」と厳しい。

実際、マイクロフォーサーズを採用するパナソニックもスマートフォンとの差別化を打ち出せず、フルサイズを採用するカメラを主力としはじめたという見方もある。大企業のしがらみを断ち切るとはいえ、オリンパスの映像事業をVAIOのように事業の核を増やせる、毎年増益を達成できる事業として成長させるのは至難の業だ。

JIPによるオリンパスの映像事業のカーブアウトはVAIOの成功に続けるのか。それとも柳の下の泥鰌となるのか。JIPの手腕に注目が集まる。

大竹 麗子 東洋経済 記者

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おおたけ・れいこ

1995年東京都生まれ。大学院では大学自治を中心に思想史、教育史を専攻。趣味は、スポーツ応援と高校野球、近代文学など。

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