「6分の1公式」が中高生の将来の仕事を奪う悲劇 藤井聡太二冠の金言に学ぶAI時代の数学的教養

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このような事例はほかにもある。その根本的な原因を探ると、「~の…に対する割合は○%」「…に対する~の割合は○%」「…の○%は~」「~は…の○%」という表現はどれも同じという認識ができないことにたどり着く。

読者の皆さんは中学か高校で2次方程式を学び、「a×x×x+b×x+c=0」の解を表す「解の公式」を暗記したこともあるだろう。最近、この証明を省略して、いきなり結果の暗記と問題練習を行う子どもたちが多くなってきた。

ちなみに証明は、b=0の場合の「a×x×x+c=0」に帰着するので、b=0の特殊な場合のほうが見るからに解きやすい問題になる。

ところが、日本数学検定協会の3級の試験結果を見るかぎり、毎年のように異変が起きている。

例えば2019年10月に出題された問題で、「64x×x-11=0」の正解率は56.8%、「x×x-7x+7=0」の正解率は81.4%である。解の公式を理解する学びを心掛ければ、このような珍現象は起きないはずだ。

数学教育にはびこる「●分の1公式」

読者の皆さんは「6分の1公式」なる、珍奇な公式をご存じだろうか。放物線「y=a×x×x+b×x+c」と直線「y=dx+e」が2つの点で交わるとき、それらのx座標さえ求めれば、積分の計算をすることなく、放物線と直線で囲まれた部分の面積を求められる公式である。有名国立大学の入試でこの使用を禁止したこともあった。

実は某大学のマークシート式の入試で、この公式を使うと正解になる問題が出題され、受験生の多くが正解となった。その翌年に、その大学は「6分の1公式」を証明させる記述式の問題を出題したところ、正解はほとんどなかったのである。

最近では、記述式の答案で「6分の1公式より」という記述がいくつかの大学で見られる状況になっている。さらに、関連する公式として「12分の1公式」「30分の1公式」というものまで出現している。

日本固有の「●分の1公式」の取り扱いは、記述式入試を行っている大学では事前に定めたほうがよいだろう。またマークシート式の入試では、そのような公式があることを踏まえた問題を出題する必要がありそうだ。

暗記数学の弱点はいろいろあるが、「公式や定理を組み立てることができない」「応用力が育まれない」などのほか、短期間で忘れてしまうことがある。だからこそ、算数の基本的な計算を間違えてしまう大学生が少なからずいるのだ。

7月24日に竜王戦決勝トーナメントをインターネットで見ているとき、解説の棋士の方が「理由づけのない将棋は頭に残らない」と述べていた。それを聞いて、暗記数学は忘れるのも早いことを指摘されたかのように受け止めた。

筆者の教育現場における経験や、筆者のゼミナール出身の約200名の教員から伝えられる現場の情報を総合すると、いわゆる試行錯誤の問題を出されると「考え抜く」生徒の割合が昔と比べて激減した印象をもつ。

例えば、「ここに外見が同一のオモリが13個ある。そのうち1個だけ、ほかと違う重さのオモリがある。天秤を3回使ってそのオモリを決定する方法を述べよ。ただし、そのオモリはほかと比べて軽いか重いかはわからない」という問題を出すと、ほとんど考えないうちから「この問題の解き方を教えてください」という質問が明らかに増えてきた。

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