26歳アイドル「私を襲った"地獄"のような痛み」 猪狩ともか「凶器のような重さに押し潰され…」

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事故に遭って、何もできない状態になったとき、「人生がいっぺんにリセットされてしまった」ような気がしました。

それがリハビリを重ねるごとに、「1つひとつできる」ようになっていきました。

最初に達成感を得ることができた「自分でズボンをはけた」ときのことは、よく覚えています。

退院後も付き添いなしに1人で外出ができるようになったり、電車に乗ることができるようになったり、車の運転ができるようになったりと、「できること」がどんどん増えていきました

「なぜそんなに前向きでいられるのですか?」

事故の経験を通してわかったことがあります。

事故前の私もそうでしたが、人は往々にして、自分が「できること」よりも、今の自分では「できないこと」「できなくなったこと」に目がいきがちですよね。

「できること」「うまくいったこと」をプラスに加算して考えるより、つい「できないこと」「うまくいかないこと」に目がいき、「減点思考」で考えがちではないでしょうか。

でも、誰だって、どんな状況だって「何かできること」は必ずありますよね。「今できること」「できるようになったこと」に目を向けるほうが、はるかに大切!

「できること」にフォーカスすれば、たとえ「できることの数」は同じでも、気持ちは全然違ってきます

「今、自分ができること」を数えるのが、猪狩さんの「前向き思考」の源泉の1つです(撮影:西邑泰和)

子どもの頃と違って、大人になると、「できるようになること」が少なくなりますよね。その分、余計に「できることが増えていく」「できることが重なっていく」のは素直にうれしいのかもしれません。事故からの「リスタート」だからこそ、実感できることです。

「なぜそんなに前向きでいられるのですか?」

よく受ける質問への答えの1つとして、「今、自分ができること」を数えると、たとえ状況は同じでも、気持ちが全然違って前向きになれる――それが私の「前向き思考」の1つの武器なので、ぜひみなさんも試してみてください。

猪狩 ともか アイドルグループ「仮面女子」のメンバー

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いがり ともか / Tomoka Igari

1991年生まれ。埼玉県出身。

2018年4月、強風で倒れてきた看板の下敷きになり、緊急手術を受けたが脊髄損傷を負い、以後、下半身不随に。歩くことはもちろん、自力で立つことさえできなくなった。

絶対安静の状態からリハビリを経て、車椅子に乗りながらアイドルとして復帰を果たし、現在は、NHK Eテレ『パラマニア』にレギュラー出演するなど、アイドル以外にも活動の場を広げている。東京都「東京2020パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」メンバー。東京都より「パラ応援大使」に任命。9月23日には初めて作詞した究極の応援ソング『ファンファーレ☆』も公開された。

 

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