コロナ禍で低価格テレビが売れ始めている事情 ネット配信動画をテレビで見る人が増えている
ところがGfkがまとめたデータによると新型コロナウイルスの流行とともに前年比100%に戻り、6〜7月は110%に伸びている。すなわちおおよそ15〜20%という、かなり大きな売り上げ動向の変化が見られる。
あくまでも仮説にしかすぎないが、こうしたエントリークラスの製品需要が伸びた背景のひとつに、これまでテレビ受像機にはあまり興味を示してこなかった若年層、女性層が貢献していると考えられる。
240万台の低価格テレビ市場が生まれ変わる
テレビ受像機にとって、ネット配信動画の受信機能は数年前まで”オマケ”でしかなかったが、日本でも海外並みに今後は重要視されていくだろう。YouTubeも低画質の短時間動画投稿が多かった時代が過ぎ去り、さまざまなジャンルの”プロ”が自ら映像コンテンツを作り始めている。
ネット動画をスマホやタブレットだけではなく、大画面テレビでも楽しむ使い方が広まり始めたことで、テレビ受像機の市場は大きく動き出すことになるだろう。
なぜなら、国内市場の40%を占めるフルHD解像度以下の普及価格帯テレビから、ネット動画再生機能が削られてしまったからだ。
フルHD以下の低価格製品は製品単価の下落から、各社とも性能と機能を削り価格競争力を高めることに注力し続けてきた。ソニー、パナソニック、シャープは、いずれも現行のエントリークラスの製品にネット動画再生機能を搭載していない。
そうした中で唯一、ネット動画機能を削ってこなかった東芝は、9月18日発売予定の新モデル「レグザV34」ではdTVやAbema、U-NEXTなど国内サービスを含む13サービスに対応させるなどネット対応を強化してきた。同製品は普及価格帯テレビ市場で、同サイズ・同クラスのライバルよりも約1万円高い水準で販売されており、今後、他メーカーも無視できなくなるだろう。
国内のテレビ受像機市場は年間600万台と言われるが、各社が性能や画質面で十分なコストをかけている4KテレビはOLEDと液晶を合わせても60%程度。つまり240万台は、ネット動画志向が強いユーザー向けには作られていないことになる。
一方でコロナ以降に増加したネット動画を積極的に見始めている視聴者は、むしろエントリークラスのテレビを求めており、メーカーの用意する商品ラインナップとの乖離がみられる。
しかし市場と製品の間に生まれるギャップは、新しい市場を生み出す源泉にもなりうる。4Kテレビでは充実させることが当たり前のネット動画へのアクセス機能と性能、画質。これらを整えることで、240万台のテレビ受像機が市場ニーズとマッチするようになれば、さらに国内テレビ市場は活性化する。
価格のみが差別化要因になっていた低価格テレビ受像機市場に、ネット動画視聴を重視した新しい商品企画という視点が加われば、一時的なコロナ需要での売り上げ増ではなく、中長期的に市場を立て直す新しいトレンドを生み出すことができるだろう。
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