コロナ禍で低価格テレビが売れ始めている事情 ネット配信動画をテレビで見る人が増えている

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近年、スマートフォンやタブレットで短時間の動画を見る機会が多かった若年層が、自宅で過ごす時間が長くなったことで、大画面で長編の映像を楽しむようになった。その影響がネット動画配信サービスの視聴時間の伸び、そしてネット動画をより大きな大画面で楽しむ傾向へとつながっていると。

こうなってくると、好きなときに好きなコンテンツをじっくり楽しめるネット動画の配信サービスは楽しみやすい。テレビ編成に自分の予定を合わせることなく、オンデマンドで映像を選ぶだけでいつでも見ることができる。

前述のように1日平均のネット動画視聴時間は1時間半を超えるが、それでもテレビ放送に比べればまだまだ控えめという意見もあるだろう。しかし、注目すべきはその内容だ。

若年層と女性に強いネット動画配信

Netflixが独占配信した『愛の不時着』ブームなども、こうした傾向を強めた理由ではあったのだろう。とりわけ女性層の支持が強かったこの作品は平均視聴時間が伸びた一因でもあったが、一方でネット動画配信をテレビで見ることそのものを女性層に広げ、定着させる効果をもたらした。

F1(20代女性)、F2(30代女性)層に限ると、98.2分という平均ネット配信動画視聴時間を大きく超え、いずれも120分以上のネット配信動画に費やしている。むしろ、ネット配信動画の視聴時間が伸びた主因が女性層にあると言えるほどだ。

すでに欧米では進行していた放送波からネット配信動画へと、テレビを楽しむメディアが遷移していく流れが、ようやく日本でも本格的に進行し始めたとも言えるだろう。現時点では放送の視聴時間が上回っているものの、今後、その差はどんどん小さくなっていくと考えられる。

そして、こうした「テレビの楽しまれ方」の変化は、テレビ受像機の市場全体にも小さくない影響を及ぼしている。

テレビ受像機市場はコロナの影響がで始めた直後からささやかれていたように、販売台数が全体として伸びているが、中でも大幅に売り上げが伸びているのがフルHD以下の解像度しかない低価格テレビ。

ご存じのように昨年来、4Kテレビへのシフトが進んでいたテレビ受像機市場。4Kテレビシフトの影響でフルHD以下の解像度しかないテレビの売り上げは、前年比で80〜90%にとどまり続けていた。

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