カバはなぜ、「口の大きさ」競い合いたがるのか

知能を活用する哺乳類ならではの高度なルール

動物園では、親の代わりに人間が動物の子どもにミルクをあげたり、エサをあげたりすることがありますが、そうして育てられた動物の子どもは、世話をしている人間のことを「親」だと思っているかもしれません。動物園で生きていくうえでは、それでまったく問題はありません。自分を守り、育ててくれる存在であれば、血がつながっていなくても、別の種類の生き物だったとしても、それは「親」ということで、何の不自由もないのです。

哺乳類が持つ「高度なプログラム」

虫などの生物の多くは、「本能」を発達させることによって生きる術を身につけてきましたが、これに対して哺乳類は、子育てによって「知能」を活用することを可能にしました。

「本能」が、自然界を生き抜くうえで最低限のプログラムであるのに対して、「知能」は、環境に応じてそのプラグラムを変化させてアップデートしたり、新しい形にグレートアップさせられるものなのです。

そのため、哺乳類の世界では、本能のみに頼って生きる生き物には見られないような、高度なプログラムが見られます。

それは、「ルール」です。例えば、カバのオスは、優劣を決めるときに、口を大きく開けて、口の大きさを競い合います。実際には、別に口の開け方が小さかったからと言って、そのまま力の強さが否定されるわけではありません。本当は、力づくで勝負を挑むことだってできますし、実際に激しい戦いになることもないわけではありません。

しかし、「口の開け方の大きい者が勝者である」ということが、カバの世界での「ルール」なのです。このルールを破って卑怯な戦いをすれば、オス同士が傷つき合い、結果としてカバの群れ全体が弱くなってしまいます。どのオスも争いに明け暮れて傷ついていたら、ほかの肉食動物に襲われやすくなってしまうかもしれないし、ほかのカバの群れになわばりを奪われてしまうかも知れません。

口が大きいことが、本当に強さの証しなのかどうかは、わかりません。また、それが自然界で重要なことなのかどうかはわかりません。しかしカバは、無用な争いを避けて群れが生き残るために、口の大きさで勝負を決めるという、高度なルールを発達させているのです。

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