カバはなぜ、「口の大きさ」競い合いたがるのか 知能を活用する哺乳類ならではの高度なルール
ほかの例もあります。世界で最も大きなシカであるヘラジカは、とても立派なツノを持っています。シカのツノは戦うための武器ですが、ヘラジカのツノは大きすぎて、武器にするには使いにくいくらいです。
もうおわかりかもしれませんが、ヘラジカの世界には、実際にツノを使って傷つけ合うことはせず、ツノの大きさで勝敗を決めるルールがあります。ツノが大きければ、もうそれで勝ちなのです。同じぐらいの大きさのツノの場合は、少しツノを突き合わせるくらいのことはありますが、それでも、本気で戦うようなことはありません。
オオカミやライオンなどのオスも、ときに激しく戦い合いますが、殺し合うまで戦うことはほとんどありません。どちらかが降参するか、逃げるかすれば勝負はおしまいです。生き抜いていくために、このような高度なルールを発達させたのです。
オスは「ルールを教える」存在
戦わずに勝敗を決める。こんな高度なルール作りは、知能が得意とするところです。しかし、こうしたルールは、体験から学ぶということはなかなかできません。「激しく戦い合えば、死んでしまう」「みんなで戦い合えば群れが滅んでしまう」ということを体験から覚えるとしたら、払う犠牲があまりにも大きすぎます。そのため、そのルールは、誰かが子どもたちに教え伝える必要があります。
哺乳動物では、そのルールを教える存在こそが、オスの役割なのです。メスは体の中で胎児を保護し、母乳で子どもを育てるという大切な役割があります。そして、オスがルールを教えていくという役割分担をしているのです。
哺乳動物の中には、オスが子育てに参加しないものもたくさんありますが、群れを作って暮らす動物のようにルールが必要な動物にとっては、オスの役割が重要なのです。
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