益子直美が語る「バレーボール界の暴力」の現実 大山加奈さんと考える「熱血指導と主体性」
――今でも夢でうなされる。完全にPTSD(心的外傷後ストレス障害)ですね。益子さんと大山さんは18歳違いなので、多少違いがありますね。
益子:中学も高校も、当時はそういう指導が本当にポピュラーというか、それしかなかった時代だった。大人気だったアニメの「アタックNo.1」の主人公に憧れてバレーを始めて。(主題歌のサビである)「苦しくったって、悲しくったって、コートの中では平気なの」でしょ?
それが私が見てきたバレーボールで、それが普通だと思っていたので、何ら不満もなかった。怒られて、ぶたれてるときはすごくつらかったんですけど、それはしょうがないと思って、ずっとやって、引退までやってきたんだよね。
大山:私も小学校の6年間は、それが普通で。逆に、自分たちはほかのチームの子たちに比べたら全然マシだと仲間と言ってました。ほかはもっとひどかった。
――以前、スポーツは苦しくて悲しいもの、コーチにたたかれても当然という認識でした。暴力指導のマイナス面についてどう感じていますか?
益子:心が育たないっていうことですね。振り返ると、まったくチャレンジしていなかった。ミスすると怒られるから。ミスはいけないものだと思ってたので。とにかくぶたれないように、ずっと無難な感じでプレーをしてきた。ギリギリのところを狙ってとか、相手の裏をかくとか、そういったトライができなかった。
大山:わかります。怒られるのが怖くて委縮して、それでミスする。悪循環ですよね。
怒られないって、実はしんどい
――練習や試合でやらないと、強気で攻める姿勢は身に付きませんよね。それなのに、試合で「なんで強気にいけないんだ」と怒鳴られる。
益子:そう。結局、私はネガティブで自信がないまま。今もそれを引きずっていますね。ただ、スポーツでよく言われる「心技体」でいうところの技術は、中高で教えてもらったと感謝しています。チームが勝つためだったら、Aクイックとか、いろんな技術を教えるはずなのに、高いトスを打ち込ませたり、フェイントはやるなとか、将来を見越して基本をたたき込まれました。
大山:私は、中高で少し違う経験をしています。とくに成徳学園高校(現・下北沢成徳)は、選手が自ら考えて取り組むことを求められました。でも、(顧問に)怒られないって、実はしんどいんです。自主性をもって自分を律して高みを目指すって、すごい大変なことで。それを高校生がやっていくって本当に大変で。「先生怒ってよ、怒ってくれたほうが楽だよ」って思うことも結構ありました。
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