「幼児でも数を理解できる」人間の脳が持つ能力

成長するにつれて小さな差を認識できるように

脳は見たものに数をリンクさせている(写真:junce/iStock)

人間の脳の領域は、3つに分かれている。1番目の領域は、3までの数量に関係している。リンゴ1個と2個のちがいを一瞬で区別できるのは、この領域のおかげだ。

人間は生まれたときから「1」と「2」を区別できる

拙著『公式より大切な「数学」の話をしよう』でも詳しく書いているが、人間は小さな数量の区別が得意だ。この能力は赤ちゃんにも備わっている。人間は生まれたときから「1」と「2」を区別できる。数の概念としてではなく、ものが1つあるか2つあるかの違いがわかるという意味だ。

点が1つだけある紙をしばらく見せられたあとに突然、点が2つある紙を見せられると、赤ちゃんはびっくりする。目のまえに違うものが現れたとわかって驚くのだ。驚きの程度は、赤ちゃんが紙を眺める時間を測定することで確認できる。すでに見たことのある模様だと、すぐに飽きてよそを向いてしまうが、見たことのない模様なら長い時間見つめるからだ。

この性質を使えば、赤ちゃんが周囲の世界に何を期待しているかを調べることができる。実験の結果、意外なことが発見された。なんと、赤ちゃんは足し算・引き算ができるようなのだ。

赤ちゃんにまず人形を2つ見せ、それをついたてで隠したあとで片方の人形を取り除く様子を見せる。すると、赤ちゃんはついたてのうしろにある人形は1つだけだと予想する。ここで、人形がまだ2つある場面を見せられると、赤ちゃんはかなりびっくりする。これは、数についての知識を学んでいない赤ちゃんが、2-1=1が正しく、2−1=2はまちがいだと理解していることを示しているのだろうか。

いや、そうともいいきれない。この実験で赤ちゃんが何にびっくりしたのかというと、自分の期待に反して人形が2つあったことだ。人間の脳には、身の周りのものを目で追うことに特化した領域が存在する。何かに注意を向けると、色や大きさ、位置などの情報が自動的に取り込まれるが、それは赤ちゃんの脳でも同じだ。だから、見ていたものが消えたり、何もないはずのところにものが現れたりすると、そのことに気がつくのだ。

人間の脳がはっきりと区別できる数には限度がある。それがいくつまでかは成長段階によって異なるが、赤ちゃんの場合は3までと考えられている。4以上の数になるとうまく区別できないからだ。

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