「幼児でも数を理解できる」人間の脳が持つ能力 成長するにつれて小さな差を認識できるように
赤ちゃんの脳が変化する詳しい仕組みはまだ解明されていないが、それが言語に関係していることまではわかっている。単数形と複数形を使いわける言語を話す子どものほうが、「1」と「4」の違いを早い時期に理解するからだ。
例えば日本語では、単数と複数はあまり厳密に区別されない。だから、この違いを日本の子どもが理解するまでには比較的時間がかかるし、数字を扱うことを覚えるのはさらに数カ月後になる。
ただし、日本の子どもはこの後れを取り戻す。逆にオランダ語を話す子どもは11以上の数を覚えるのに比較的時間がかかる。日本語では、「24」は「20と4」で、子どもでも数の成り立ちを理解しやすいが、オランダ語では「4と20」の順番になるからだ。デンマーク語はオランダ語よりさらに複雑で、例えば「90」は「(4と2分の1)×20」と表現される。
数を覚えるうえで言語はたしかに重要だが、結局のところものをいうのは「1つ」と「2つ以上」を区別する能力のほうだ。子どもたちが「1(いち、ひとつ)」という言葉の意味を獲得する基礎となるのはこの能力だろう。「1」「2」「3」……をきちんと認識できない子どもは、まだ数のはたらきを理解していない。数字を順番に言うことはできても、ぬいぐるみを「1個」取っておいでと言われて、ちゃんと1個取ってくるかはあやしいものだ。
人間は、生まれながらの能力をこのように発達させていく。「1」の意味がわかれば、「2」も「1と、もう1つの1」だと理解できる。このような認識はとくに数を学ぶときに便利だが、数量を処理する脳の領域がなければ成り立たない。
なぜ「おおざっぱな違い」を理解できるのか
人間は、成長するにつれて小さな差を認識できるようになる。例えば生後3カ月くらいになると、4個の点と6個の点の違いを区別できる。大人になると、13個の点は12個より多いことも見分けられるようになる。
ものの長さは、見ただけで正確にとらえられるものではない。もちろん、この長さはあの長さの2倍だといったことはすぐ認識できる。長方形のテーブルを目にしたとき縦横の長さがちがうのはわかっても、正確に何センチメートルかまではわからない。時間の長さについてもまったく同じで、10秒と5分の違いは確実にわかるし、1時間と2時間の差にも気がつく。だが1時間と1時間+1分なら、はっきり区別できはしないだろう。
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