香港のメディア王「自由のため1日1日を戦う」

「国家安全法」で逮捕されたジミー・ライ激白

香港のメディア状況は日本よりも数倍変化が速い。『アップル・デイリー』は発行部数首位をつねに争い、昨年は新聞の発行部数、オンラインの閲覧数ともにトップとなった。しかし『アップル・デイリー』の経営は苦しい。発行部数以上に広告収入が落ち込んでいるのだ。

中国共産党を批判する『アップル・デイリー』には香港で存在感を増す中国企業は言うに及ばず、大陸とのビジネスを主とする香港企業からも広告出稿が途絶えた。大陸という大の得意先の意向に香港企業は極めて敏感である。

大陸から何の指示がなくても『アップル・デイリー』への広告出稿がビジネスにどのような影響を及ぼすのか、彼らが最もよくわかっている。かつては毎日100ページを超えていた同紙は今では20ページを切るまでやせ細った。その減ページが広告収入減となって経営を直撃。雑誌の売却、業務の外注化、オンライン媒体への有料会員制の導入など経営に大ナタを振るってはいるが、5年連続で赤字を計上している。

「97年の香港返還時には『アップル・デイリー』以外にも中国を批判する新聞は存在していた。しかし、強大化する中国共産党とその支配に直面して新聞が中国共産党批判を自粛してしまった。これは経営者の問題だ。しかし私は単なる企業経営者ではなく、メディア人だ。自粛も委縮もしない。自由と民主を守ることこそ『アップル・デイリー』を創刊した志そのものである。その志が変わることはない」

かつてはユニクロにお手本を提供

ライが自由と民主を守る志を立てるにいたったのは彼の生い立ちによるものが大きい。ライは12歳だった1960年、大陸からたった1香港ドルを片手に香港に密航。工場の不法労働者から廉価アパレル・チェーン「ジョルダーノ」を創業。香港ばかりか大陸、東南アジア各地にも店舗網を展開する大成功を収めた。まさに香港ドリームの体現者である。いまや世界を席巻するユニクロを率いるファーストリテイリング会長兼社長、柳井正は香港にライを訪れて、ジョルダーノを手本にユニクロの展開を決めたという。

「1香港ドルしか持たずにたった1人で香港に密航してきた私が成功して今こうしていられるのは、香港が自由の天地だったからだ。香港が香港であるためには自由を失ってはいけない。自由が失われれば香港は香港ではなくなる。だから私は闘うのだ、闘わなくてはいけないのだ」

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